Appearance
ハッチング範囲が認識されない・はみ出す
このページで解決できること
ハッチコマンドを実行しても領域が認識されずに何も作図されない、あるいはハッチ模様が意図しない範囲まで広がってしまう、という症状を切り分けて解決できるようになります。閉領域として認識されない原因(端点の不一致・交差ではなく端点接続が必要な仕様・重複線・連結未整理)を、見た目では分からない部分まで整理して順に潰していく手順を扱います。
こんな症状でお困りの方へ
- ハッチコマンドで図形を選択しても「作図されない部分があります」と表示されてハッチが入らない
- 一見閉じているはずの矩形なのに、ハッチが全く描かれない
- ハッチを実行すると、囲った範囲の外側まで斜線がはみ出してしまう
- 部屋の壁線を選択してハッチしたら、隣の部屋まで模様が広がった
- 連続線として右クリックで一括選択したいのに、途中で選択が止まる
- 1線ごとに左クリックで選んでいるのに、いつまでも実行ボタンが押せない(実行されない)
- 同じ図形に何度もハッチをかけると、線が二重・三重に重なって表示が乱れる
画像準備中 — ハッチが認識されない代表的な症状画面(「作図されない部分があります」表示/はみ出し例/連続線が途中で切れる例)
背景: Jw_cad のハッチコマンドは、選択した線分が「端点同士で連続的につながった閉領域」を構成しているかを内部的にトレースしています。線が交差しているだけ・端点が0.001mm単位でずれているだけでも、閉領域とは認識されません。図面が見た目で閉じていることと、データ上で閉じていることはイコールではない、というのがこの症状の根本にあります。
主な原因
| # | 原因 | 起きる場面 |
|---|---|---|
| 1 | 端点がわずかにずれていて閉領域になっていない | 端点読取をせずにフリーハンドで線を引いた/伸縮で長さを調整した直後 |
| 2 | 線が「端点接続」ではなく「途中で交差」しているだけ | 矩形を作図した後に通り芯と交差させた/壁線が突き抜けている |
| 3 | 重複線・微小な切れ端が混ざっている | コピー&貼り付けを繰り返した/DXF読込後の図面 |
| 4 | 連続線として認識されない(向きや経路が一意に決まらない) | T字・十字に分岐する経路で右クリック選択した |
| 5 | レイヤをまたいで境界線が分散している | 壁線と通り芯と建具線を別レイヤで描いた状態でハッチを試みた |
| 6 | Z軸レベルの違う線(2.5D要素)が混在 | SPEED や 2.5D オプションで Z 値を入れた線が紛れ込んだ |
| 7 | 1線左クリック選択で「閉ループの始点に戻っていない」 | 順序通りクリックしたつもりが、途中の線を飛ばしている |
背景: 上記頻度は PERSC 編集部が読者からの問い合わせを集計した体感順です。実務では「1. 端点ずれ」「2. 交差のみ」「3. 重複線」の上位3つで相当数を占める印象があります。とくに DXF 経由で他CADから持ち込んだ図面はこの3つが同時発生していることが多く、ハッチが通らない場合はまずデータ整理を疑うのが定石です。
対処方法
注意: 削除・初期化・解除(連結整理・線分割・範囲補正を含む)を行う前に、必ず以下の 3 ステップ安全手順 を踏んでください:
- コピー退避: 対象
.jwwを別名でコピーバックアップ(例:案件A.jww→案件A_backup_2026-05-08.jww)。閉領域コピーを別ファイルで作って検証するのが安全です- 検証: バックアップを別場所に置いた状態で、ハッチング対象だけを抽出して再現性を確認します(寸法線・建具レイヤは対象外にする)
- 対処: 上記2ステップを踏んだ上で、本記事の対処を実行
連結整理・範囲補正は元図形を変える可能性があります。原本に対して直接実行すると、寸法・建具表示に 永続的な影響 が出る場合があります。
対処1: 連続線を右クリックで選択し直し、開いている箇所を可視化する
最初に行うのは「どこが閉じていないかを目で見える状態にする」ことです。閉領域として認識されない原因をしらみつぶしに調べる前に、Jw_cad 自身に「ここが開いている」を教えてもらいます。
手順
- メニューバー「作図」→「ハッチ」でハッチコマンドを起動します
- コントロールバー「1線」を選び、「角度」「ピッチ」は仮の値(例: 45度/3mm)で構いません
- 閉領域を構成する線のいずれか1本を右クリックします(端点がつながっている連続線が一括選択されます)
- コントロールバー「実行」をクリックします
- ステータスバーに「作図されない部分があります」と表示された場合、ハッチが入っていない辺の付近に開いた箇所があります
- その付近を画面いっぱいに拡大表示し、端点同士の隙間を目視で探します
画像準備中 — 右クリック選択後にハッチを実行し「作図されない部分があります」が表示された画面と、開いている端点付近の拡大
Tips: 隙間が小さすぎて目視で見つからない場合は、「測定」コマンドで疑わしい端点間の距離を取ると 0.01mm レベルのずれも数値で確認できます。
注意: 右クリック選択は「端点が連続している線」をたどる仕組みのため、T字・十字の交差点で経路が分岐するとそこで連続選択が止まります。複雑な領域の場合は対処2の左クリック方式と併用しましょう。
対処2: 1線ずつ左クリックで選択し、波形表示の始点に戻って閉じる
右クリックの連続選択が途中で切れる場合は、1線ごとに左クリックで選択していく方式に切り替えます。
手順
- ハッチコマンドが起動した状態で、コントロールバー「クリアー」を一度クリックして選択をリセットします
- 閉領域を構成する1本目の線を左クリックします。選択された線が黄緑色の波形表示になります
- 隣接する線を順に左クリックで選択していきます。経路の方向(時計回り/反時計回り)はどちらでも構いません
- 一周して最初の波形表示の線をもう一度左クリックすることで、閉領域として確定します
- コントロールバー「実行」をクリックします
画像準備中 — 1線ずつ左クリックで選択していく場面と、最後に波形表示の線をもう一度クリックして閉じる場面
背景: 1線左クリック方式は「波形表示の始点に戻ってくるまで実行できない」仕様です。これは「読者が思っている閉領域」と「データ上の閉領域」が一致するかを、ユーザーに最終確認させるための Jw_cad 独特の設計です。
Tips: 1本飛ばして次の線をクリックしても、端点がつながっていれば自動的に経路として認識されます。ただしT字交差では分岐する両方を含んでしまい意図と違う経路になることがあるため、複雑な経路は2手前くらいから慎重にクリックしましょう。
対処3: 端点のずれをデータ整理で修正する
対処1で「特定の角の付近で開いている」と分かったら、その端点を厳密に一致させます。
手順
- メニューバー「編集」→「データ整理」を起動します
- コントロールバー「連結整理」にチェックを入れます
- 範囲選択で対象の閉領域全体を囲みます
- コントロールバー「選択確定」をクリックします
- 「連結整理」が実行され、ほぼ同位置にある端点同士が統合されます
- 再度ハッチコマンドを起動し、対処1の手順で閉領域を選択し直します
画像準備中 — データ整理コマンドの「連結整理」設定と実行後の挙動
PERSCの推奨: DXF や他CADから取り込んだ図面は、ハッチを試す前に必ずデータ整理を一度かける運用にすると、後から原因究明する手間が大幅に減ります。連結整理に加えて「重複整理」もチェックしておくと、見えない重複線も同時にまとめられます。
注意: 連結整理は「許容範囲内の端点ずれ」を寄せて統合する処理のため、わざと端点をわずかに離していた寸法線などにも影響することがあります。建具部分・寸法線レイヤを非表示にしてから実行するか、対象範囲を限定して実行しましょう。
対処4: 交差している線を端点で切断する
矩形を描いたあとに通り芯や別の壁線と「貫通する形で交差」しているだけの状態は、ハッチの境界線として認識されません。交差点で線を切断して、端点同士の接続に変換する必要があります。
手順
- メニューバー「編集」→「コーナー」または「伸縮」コマンドを起動します
- 交差している2本の線を順にクリックして、交点でコーナー処理します
- または「消去」コマンドの「節間消し」で、交差点から先のはみ出している部分を切断します
- 全ての交差点を端点接続に変換したら、ハッチを再実行します
画像準備中 — 貫通交差している壁線を「コーナー」または「節間消し」で端点接続に変換する場面
Tips: 交差している線が多い場合、すべて手作業で切るのは大変です。交差点を一気に切断したいときは「包絡処理」コマンド(メニューバー「編集」→「包絡」)を使うと、矩形範囲内の線を一括で交差点処理できます。建築の壁取り合い部分で多用するテクニックです。
対処5: 重複線・短い切れ端を整理する
ハッチが「外側にはみ出す」症状は、多くの場合、重複線か微小な切れ端が原因です。見た目では1本の線でも、データ上は2本3本と重なっていると、ハッチコマンドが領域判定を誤ります。
手順
- メニューバー「編集」→「データ整理」を起動します
- コントロールバー「重複整理」にチェックを入れます
- 「微少線分省略」のチェックも入れて、消去する最小長さ(推奨: 0.5mm)を入力します
- 範囲選択で図面全体(またはハッチ対象範囲)を囲みます
- コントロールバー「選択確定」をクリックします
- 重複していた線が1本に統合され、ゴミのような短い線分が消去されます
画像準備中 — 重複整理と微少線分省略の設定画面と実行前後の比較
背景: 「微少線分省略」は、コピー時の誤クリックで生まれた「長さ 0.01mm の線」のような目に見えない要素を消去する機能です。これらが境界に紛れていると、ハッチがその線をたどって意図しない経路へ広がります。
対処6: 境界線をひとつのレイヤに集約する
壁線・通り芯・建具線が別レイヤに分散したまま「全レイヤ表示」でハッチを試みると、思わぬ線まで境界として拾われ、はみ出しや認識失敗が起きます。
手順
- ハッチに関係しないレイヤ(寸法・文字・通り芯など)は、レイヤバーで非表示にします
- 残った表示レイヤが、ハッチで境界として読みたい線のみであることを確認します
- ハッチコマンドを起動し、対処1の手順で領域を選択します
画像準備中 — レイヤバーで境界に使うレイヤだけを表示にする場面
PERSCの推奨: 床・壁の仕上げハッチを多用する図面では、**「ハッチ境界専用レイヤ」**を1枚作っておき、対象部屋の壁内側線だけをそのレイヤにコピーしておく運用がおすすめです。表示切替だけでハッチが安定して入るようになり、再ハッチ時の手間も大幅に減ります。
対処7: Z軸レベル違い(2.5D要素)の混入をチェックする
2.5D オプションや SPEED の連動データを使った図面では、線に Z 値が入っていることがあります。XY平面では同じ位置にあっても Z 値が異なる線同士は閉領域として認識されないため、ハッチが通りません。
手順
- ハッチが通らない閉領域の線を1本選択し、メニューバー「その他」→「2.5D」(または該当の Z 値確認コマンド)を実行します
- 各線の Z 値を確認し、揃っていない場合は揃え直します
- 2.5D 機能を使っていない図面で Z 値が入ってしまっている場合は、線の Z 値を 0 にリセットします
画像準備中 — 2.5D 設定での Z 値確認画面(該当する場合のみ)
注意: 2.5D 系の挙動は使用していないユーザーには無関係です。SPEED 連携や 2.5D オプションを使った覚えが無い場合は、対処1〜6で解決することが多く見られます。最後の砦として残しておきましょう。
予防策・再発防止 ★PERSC独自
ハッチが通らない/はみ出す症状は、図面側のデータ品質を整えておくことで大幅に予防できます。3つの運用ルールを習慣化しましょう。
1. 線を引くときは必ず端点読取モードを使う
新規に線を引くとき、Shift + 右クリック(または各端点の読取モード)で端点を確実に拾う癖をつけると、端点ずれによるハッチ失敗が大幅に減ります。フリーハンドで「だいたいここ」とクリックする習慣がある人ほど、後でハッチに苦労します。
2. ハッチを試す前にデータ整理を一度かける
DXF・SXF などで他CADから取り込んだ図面、もしくはコピー&貼り付けを多用した図面では、ハッチを試す前に必ず「重複整理+連結整理+微少線分省略」を一度かける運用が効果的です。整理を後回しにすると、ハッチ失敗の原因究明に何倍もの時間がかかります。
3. ハッチ専用の境界レイヤを用意する
仕上げ表現や床ハッチを多用する物件では、「ハッチ境界専用レイヤ」を1枚作り、必要な閉領域だけそこに描く運用にすると安定します。
PERSC 編集部では、レイヤグループの中に「H: ハッチ境界」レイヤを必ず1枚配置し、ハッチ前にそのレイヤだけを表示状態にしてから実行する手順を標準化しています。レイヤ運用全般は レイヤの基本 ※準備中 を参照してください。
つまずきポイント・補足 ★PERSC独自
Q: 円の内側だけにハッチを入れたいのに右クリックでうまく拾えない
→ 単独の円に対するハッチは「右クリックのみ有効」という仕様です。左クリックでは波形表示にならず、選択そのものが受け付けられません。円弧と直線が混在した閉領域の場合は、円弧を含む経路全体を1線ずつ左クリックで選んでいく必要があります。
Q: 入れ子になった2重の閉領域でハッチを実行したら、内側だけ抜けた
→ 仕様通りの挙動です。2重以上の閉領域をすべて一度に選択してハッチを実行すると、外側から数えて奇数番目の領域だけがハッチングされます。ドーナツ状の表現(外側ハッチ・内側ハッチなしを実現したい)には便利ですが、意図と違う場合は内側と外側を別々のハッチコマンドで実行しましょう。
Q: 「作図されない部分があります」が出るが、見た目は完全に閉じている
→ 0.01mm レベルの端点ずれ・重複線が原因のことが大半です。対処3の連結整理+対処5の重複整理を順にかけてから再試行してください。それでも改善しなければ、その閉領域だけを別ファイルにコピーして、新規ファイル上でハッチを試すと、レイヤや余分な要素を排除して原因切り分けができます。
Q: 既にハッチが入っている部分に再度ハッチをかけたら、線が乱れた
→ ハッチは「線の集合体」として作図されるため、二重三重にかけると同じ位置に線が重なります。再ハッチしたい場合は、先に既存のハッチを範囲選択で消去してから実行しましょう。
Q: ハッチコマンドの操作自体に自信がない
→ ハッチコマンド本体の使い方は ハッチング 1線 を参照してください。範囲選択・連続線選択の基本は 範囲選択の基本 ※準備中 で扱います。
Q: パターンハッチ(馬乗り目地・登録図形)で範囲が認識されない
→ パターンハッチであっても境界線の判定ロジックは同じです。本ページの対処1〜6をそのまま適用してください。登録図形でハッチを行う場合の操作手順は ハッチング 模様 ※準備中 で扱います。
Q: 「クリアー」を押しても選択が解除されない
→ 一度ハッチコマンドを終了し、別のコマンド(例: 線コマンド)に切り替えてから再度ハッチコマンドを起動するとリセットされます。コマンドを終了せずに連続作業していると、選択状態が残ったまま次の領域指定が始まり、思わぬ範囲を巻き込むことがあります。
関連項目
- ハッチング 1線 — ハッチコマンドの基本操作
- ハッチング 模様 ※準備中 — 馬乗り目地・登録図形ハッチ
- 範囲選択の基本 ※準備中 — 連続線選択・左右クリックの違い
- レイヤの基本 ※準備中 — 境界レイヤ運用
- DXF読込で線が分割される — 他CAD取り込み時のデータ整理
- DXF読込で文字が文字化けする — DXF系トラブルの関連
- 仮点が表示されない — 端点読取が効かない場合の関連
まとめ
- ハッチが通らない原因は「端点ずれ」「交差のみで端点接続されていない」「重複線」の3系統が多く見られる
- 最初に右クリック連続選択でハッチを試して「作図されない部分があります」を出させ、開いている箇所を可視化するのが最短ルート
- 再発防止には「端点読取モードを必ず使う」「ハッチ前にデータ整理をかける」「ハッチ境界専用レイヤを用意する」の3点セットが効果的