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パラメトリック変形の基準点変更
このページでできるようになること
Jw_cadの「パラメトリック変形」コマンドで、変形の基準点(不動点・回転中心・倍率の中心)を任意の位置に変更できるようになります。基準点を通り芯の交点や柱芯に置き直すことで、伸縮の方向や回転の中心を意図どおりに制御し、「片側だけを動かす」「特定の通り芯を中心にスパンを左右対称に変える」「ある柱を回転中心にして部材を回す」といった精密な変形ができるようになります。
背景: パラメトリック変形の基本フロー(範囲選択→選択確定→変形指示)は パラメトリック変形の基本(部分伸縮で形状変更) で解説しています。この記事はその続きで、「基準点を変えると結果がどう変わるか」「どの場面で基準点変更が必要になるか」だけを深掘りします。
基準点とは何か
パラメトリック変形における 基準点 は、変形操作の「動かない一点」です。マウスでの自由な変形では目立ちませんが、倍率指定・回転指定・数値位置指定 のいずれかを使うと、基準点が変形結果を決める要になります。
| 変形方法 | 基準点の役割 |
|---|---|
| マウスでの任意方向変形 | マウスの相対移動量に応じて選択図形が動く。基準点は仮表示として参考に出る |
| 倍率指定 | 拡大・縮小の中心点。基準点はそのまま動かず、周囲が指定倍率で広がる/縮む |
| 回転指定 | 回転の中心点。基準点を軸に選択図形が回転する |
| 数値位置指定 | 元位置から指定座標分動かす起点。基準点を変えると相対座標の解釈位置が変わる |
範囲選択を確定したとき、Jw_cadは初期基準点として 選択範囲のおおむね中心付近 に仮の基準点を自動配置します。多くの場合この初期位置のままでも変形できますが、「右端を固定して左端だけ動かしたい」「特定の通り芯を中心に左右対称に拡大したい」といった意図を持って変形するときは、基準点を能動的に動かす必要があります。
要確認: 範囲選択直後に表示される「初期基準点の仮点」の表示形式(色・形状・サイズ)を実機で確認します。
基準点変更の操作フロー
操作サマリー(範囲選択モードから基準点を変える場合)
| # | 操作 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | パラメトリック変形コマンドを起動 | 範囲選択モードに入る |
| 2 | 変形させる範囲の始点・終点を左クリック(文字を含めるなら終点を右クリック) | 初期基準点が選択範囲の中心付近に自動表示される |
| 3 | コントロールバーの「基準点変更」を左クリック | 基準点指示と同時に選択も自動確定される |
| 4 | 新しい基準点位置を左クリック(任意点)または右クリック(読取点) | 通り芯の交点や柱芯にスナップさせるなら右クリック |
| 5 | 変形方向・倍率・回転・数値位置を指定して左クリックで確定 | 新基準点を起点に変形が実行される |
画像準備中 — 基準点変更の5ステップフロー(範囲選択→「基準点変更」クリック→新基準点指示→変形→完了)
ステップ1〜2: 範囲選択まで(基本コマンドと同じ)
範囲選択の取り方は基本コマンドと同じです。詳しくは パラメトリック変形の基本(部分伸縮で形状変更) を参照してください。
範囲選択を終えると、初期基準点の仮点が選択範囲の中心付近に表示されます。
画像準備中 — 範囲選択直後の初期基準点(選択範囲の中心付近に仮点が表示されている状態)
ステップ3: 「基準点変更」ボタンを左クリック
範囲選択モード時のコントロールバーに表示されている「基準点変更」を左クリックします。
注意: 「基準点変更」を左クリックすると、範囲選択もこのタイミングで自動確定されます。「選択確定」を別途押す必要はありません。基準点を変えるかどうか迷っているうちに「基準点変更」を押してしまうと、範囲選択の修正ができなくなる点に注意します。
画像準備中 — 範囲選択モード時のCB(「選択確定」「基準点変更」が並んでいる状態)
ステップ4: 新しい基準点を指示
マウスポインタが基準点指示用に変わります。
| クリック種別 | 動作 |
|---|---|
| 左クリック | マウスポインタの位置(任意点)を新基準点にする |
| 右クリック | 既存図形の端点・交点・中点などの読取点に基準点をスナップ |
通り芯の交点や柱芯のような 正確な位置に基準点を置きたい場合は必ず右クリック を使います。左クリックで目分量だと、基準点と図形の位置関係がずれて変形結果がおかしくなります。
Tips: 基準点は 範囲選択した図形の外側に置いてもかまいません。たとえば「ある通り芯を中心にして、その通り芯から離れた範囲を拡大する」という操作も可能です。基準点は「どこを動かさないか」を決める一点であり、選択範囲の中にある必要はありません。
画像準備中 — 新基準点を読取点(通り芯の交点)に右クリックでスナップしている状態
ステップ5: 変形を実行
新基準点を確定すると、コントロールバーが変形指示モードに切り替わります。あとは通常どおり、マウスで方向を指示するか、倍率・回転・数値位置を入力して変形を確定します。
画像準備中 — 基準点変更後の変形指示モード(CBに「基点変更」表示)
変形指示モード中に基準点を変える
選択確定後の変形指示モードでも、コントロールバーに「基点変更」が表示されます。これを左クリックすると、変形を実行する前にもう一度基準点を変え直せます。
要確認: 範囲選択モード時のCBボタンは「基準点変更」、変形指示モード時のCBボタンは「基点変更」と表記が異なる可能性があります。実機で正確な表記を確認します。
| タイミング | CBボタン名 | 動作 |
|---|---|---|
| 範囲選択モード時 | 基準点変更 | 押すと選択も同時に確定される |
| 変形指示モード時 | 基点変更 | 押しても選択は確定済みのため、純粋に基準点だけ変わる |
画像準備中 — 変形指示モード時のCB(「基点変更」が表示された状態)
Tips: 「基準点を変えてからやっぱり別の位置に変えたい」と思ったら、変形を確定する前にもう一度「基点変更」を押せばやり直せます。基準点は何度でも変更できます。
基準点を変えると結果がどう変わるか
「基準点が違うだけで変形結果がどう変わるか」を、3つの変形方法ごとに整理します。
マウス変形(任意方向)と基準点
マウスで変形位置を指示する場合、基準点位置からマウス指示位置までの相対ベクトル が変形量として適用されます。基準点を変えても変形量そのものは変わりませんが、画面上での「どこを起点に距離を測るか」の感覚が変わります。
数値で寸法を指定するわけではないため、マウス操作主体の場合は基準点を変えるメリットは限定的です。
倍率指定と基準点
倍率指定(X倍率, Y倍率)で変形する場合、基準点が拡大・縮小の不動点 になります。
たとえば倍率「2,1」で変形すると、選択範囲がX方向に2倍に広がりますが、その「広がる中心」は基準点位置です。
| 基準点位置 | 倍率「2,1」での結果 |
|---|---|
| 選択範囲の中央 | 中央を中心に左右に等しく広がる(左右対称に2倍) |
| 選択範囲の左端 | 左端は動かず、右側だけが2倍の位置まで広がる |
| 選択範囲の右端 | 右端は動かず、左側だけが2倍の位置に動く |
| 選択範囲の外側 | 基準点との相対距離が2倍になる位置に選択範囲全体がずれて拡大 |
要確認: 倍率指定時に基準点が「拡大・縮小の不動点」として機能するかを実機で確認します。
画像準備中 — 同じ範囲選択・同じ倍率「2,1」で、基準点を「中央」「左端」「右端」の3パターンに変えた変形結果の比較
回転指定と基準点
回転指定(角度入力)で変形する場合、基準点が回転の中心 になります。
たとえば回転「30」を入力すると、選択範囲が基準点を軸に30度回転します。基準点を変えるだけで、同じ角度入力でも回転中心がまったく異なる結果になります。
| 基準点位置 | 回転「30」での結果 |
|---|---|
| 選択範囲の中央 | 図形中央を軸に30度回転 |
| 選択範囲の角の一点 | その角を支点に30度回転(支点側は動かない) |
| 通り芯の交点 | 通り芯の交点を中心に30度回転 |
| 別の柱の柱芯 | その柱を中心に部材が30度回転 |
Tips: 「ある柱を中心に梁を傾ける」「特定の通り芯を軸に屋根を回転させる」といった、構造的な意味のある回転を行うときは、基準点を必ずその中心点(柱芯・通り芯交点)に右クリックでスナップさせます。
画像準備中 — 回転「30」で基準点を「中央」「角」「外部の柱芯」の3パターンに変えた回転結果の比較
数値位置指定と基準点
数値位置指定(X寸法, Y寸法 形式)で変形する場合、基準点位置を起点とする相対座標 で変形先が解釈されます。基準点が変われば、同じ「500, 0」入力でも到達する位置が異なります。
要確認: 数値位置指定時に基準点が相対座標の起点になるか、それとも別の基準(マウスポインタ位置・選択範囲の中心など)を起点にするかを実機で確認します。
派生パターン
パターンA: 片側を固定して伸縮方向を制御
範囲選択した図形のうち「動かしたくない側」に基準点を置けば、もう片側だけが伸縮します。
たとえば壁開口を「右側の壁を固定して左側にだけ広げたい」場合、開口部全体を範囲選択した後、基準点を 右側の壁線の交点 に右クリックで置けば、変形時に右側は動かず、左側だけが伸縮先まで動きます。
画像準備中 — 開口部の右壁を基準点にして、左壁だけを左方向に伸ばした結果
パターンB: 通り芯交点を回転中心にする
伏図で「特定の通り芯を中心に梁を回転させたい」場合、基準点をその通り芯交点に右クリックでスナップ → 回転角度を入力すれば、通り芯交点を軸として梁が正確に回転します。
パターンC: 倍率と基準点で左右対称拡大
「中央を動かさず、左右に対称に広げる」場合、倍率指定時の基準点を選択範囲の中央線に置きます。倍率「2,1」で実行すると、中央を不動点として左右に等しく広がる結果になります。
通り芯のスパン全体を中央通りを動かさずに左右対称に広げたい場合などに有効です。
パターンD: 数値位置と基準点で精密配置
「ある柱芯を起点に、ちょうど500mm右の位置まで何かを動かす」というような、起点と距離を両方厳密に指定したい場合、基準点をその柱芯に右クリックで置いた上で、数値位置「500, 0」を入力します。マウスでの目分量と違って、起点と距離の両方が正確に指定できます。
実務での使い方
通り芯スパンを「片側固定」で広げる(RC造伏図)
RC造の伏図で「X2-X3通りのスパンを6,000mmから6,500mmに広げる」変更が入ったとき、X2通りを動かさずにX3通りだけを500mm右にずらしたいケースがあります。
操作の組み立て:
- X3通りより右側全体(X3通り自体は範囲枠と交差させる)を範囲選択
- コントロールバーの「基準点変更」を左クリック
- X2通りの読取点(柱芯交点など)に右クリック で基準点を置く
- 数値位置「500, 0」を入力(または X方向にマウスで500mm移動)
- 変形を確定
これでX2通りは完全に動かず、X3通りより右側だけが500mm右に再配置されます。基準点を置かずに変形すると、選択範囲の中心が基準点になるため、結果として全体がずれてしまうことがあります。
PERSCの推奨: 通り芯スパン変更では「動かさない通り芯(基準とする通り芯)」を必ず基準点として明示的に指定するのを習慣にします。基準点を意識しないで変形すると、別の通り芯まで連動してずれていることに後から気づくケースがあります。
矩計図の階高を「基準階固定」で変える(矩計図)
矩計(かなばかり)図で「2階の床レベル(FL)は固定したまま、3階以上の階高を200mm上げたい」場合、基準点を2階のFLラインに置く必要があります。
操作の組み立て:
- 3階床より上の構成材一式(床線・天井線・梁・サッシ・寸法線)を範囲選択
- 「基準点変更」を左クリック
- 2階FLライン上の読取点(柱と床の交点など)に右クリック で基準点を置く
- 数値位置「0, 200」を入力(Y方向に+200mm)
- 変形を確定
2階FLが完全に動かず、3階以上だけが200mm上昇します。基準点を意識しないと、選択範囲の中央付近を基準にした変形になり、2階FLまで微妙にずれてしまうことがあります。
背景: 矩計図は「基準階を絶対動かさない」のが最重要原則です。基準階のレベルがずれると、上下階の取り合い・サッシ高さ・天井ふところなど全部に影響します。基準点を基準階のFLに明示的に置くことで、この事故を構造的に防げます。
柱を中心に梁を回転させる(特殊角度の伏図)
斜めに振った梁を含む伏図で「ある柱を中心に梁を15度傾ける」場合、基準点をその柱芯に置いて回転角度を指定します。
操作の組み立て:
- 回転させたい梁を範囲選択
- 「基準点変更」を左クリック
- 回転中心としたい柱の柱芯に右クリック で基準点を置く
- コントロールバー「回転」入力ボックスに「15」を入力
- 変形を確定
柱芯を軸に梁が15度回転します。基準点を変えずに回転すると、選択範囲の中央付近を軸とした回転になり、柱と梁の接続位置がずれます。
部分的な左右対称拡大(建具リスト・展開図)
建具リストや展開図で「中央線を動かさずに、左右対称に幅を1.2倍にしたい」場合、倍率指定と基準点を組み合わせます。
操作の組み立て:
- 拡大したい建具部分を範囲選択
- 「基準点変更」を左クリック
- 建具の中央線(鉛直軸)の読取点に右クリック で基準点を置く
- コントロールバー「倍率」入力ボックスに「1.2, 1」を入力
- XY方向またはX方向に確定
建具の中央線が動かず、左右に対称に1.2倍まで広がります。
つまずきポイント・対処
Q: 「基準点変更」を押したら、まだ範囲選択を直したかったのに確定されてしまった
→ 「基準点変更」を左クリックした時点で範囲選択は自動確定されます。範囲選択を直したい場合は、コントロールバーの「再選択」を押して範囲選択モードに戻ってからやり直します。
Q: 基準点を読取点にスナップさせたいのに、ずれた位置に置かれてしまう
→ 基準点指示時に 左クリック すると任意点扱いになり、目分量で配置されます。読取点(既存図形の端点・交点・中点)にスナップさせたい場合は必ず 右クリック を使います。
Q: 倍率を指定して変形したら、図形全体が想定外の位置にずれてしまった
→ 基準点位置が拡大・縮小の中心になるためです。基準点が選択範囲の中央でない場合、その分だけ全体がずれます。 左右対称に拡大したい場合は基準点を選択範囲の中央に、片側を固定したい場合は固定したい側の端に基準点を置き直してください。
Q: 回転を指定したら、想定と違う場所を中心に回転してしまった
→ 基準点が回転中心になります。意図した回転中心(柱芯・通り芯交点など)に基準点を右クリックでスナップさせ直してください。基準点を変えずに回転すると、選択範囲の中央付近が回転中心になります。
Q: 数値位置を入力しても、想定と違う位置に動いた
→ 数値位置は基準点位置を起点とした相対座標として解釈されます。基準点を意図した起点(柱芯交点など)に右クリックでスナップさせてから入力してください。
要確認: 数値位置指定時の基準点の役割(基準点を起点に相対座標が解釈されるかどうか)は実機で確認します。
Q: 基準点を変えた後にもう一度変えたいが、CBにボタンが見当たらない
→ 変形指示モードでは「基点変更」というボタン名でCBに表示されます。「基準点変更」とは表記が違うため見落としやすいですが、機能は同じです。
Q: 基準点を選択範囲の外側に置いていいのか不安
→ 問題ありません。基準点は「選択範囲の中で動かさない一点」ではなく「変形の不動点・回転中心」なので、画面上のどこにでも置けます。たとえば「画面の右端にある柱芯を中心に、画面左側の範囲を回転させる」といった操作もできます。
Q: 基準点を変えたあとに「やっぱり初期位置に戻したい」
→ コントロールバーの「再選択」を押して範囲選択モードに戻り、もう一度範囲を取り直すと初期基準点(選択範囲の中心付近)に戻ります。基準点だけをワンクリックで初期位置にリセットする機能はありません。
Q: 基準点を変えた後の倍率・回転入力ボックスが空欄になっている
→ 仕様です。基準点を変えるたびに倍率「1,1」・回転「0」のデフォルトに戻るわけではなく、入力した値はモード切替を超えて保持されます。前回の入力値が残っている場合は、改めて入力ボックスをクリックして書き換えるか空欄にしてから変形してください。
要確認: 倍率・回転入力ボックスの値が基準点変更を挟んで保持されるか、リセットされるかを実機で確認します。
関連項目
- パラメトリック変形の基本(部分伸縮で形状変更) — コマンドの基本フロー・範囲選択時の3種類の図形扱い
- 伸縮(基本/包絡伸縮/突出長指定) — 線分1本ずつの端点伸縮(基準点の概念がない単純伸縮)
- 移動 — 図形の形を変えずに位置だけ動かす(基準点を持つ点で類似)
- 複写 — 図形をコピーして配置する(基準点を持つ点で類似)
- 範囲選択の基本 — 範囲枠の取り方の基本
- 2.5D(透視図・鳥瞰図・アイソメ) — パラメトリック変形と組み合わせて使う立体表示機能
まとめ
- 基準点は変形の「不動点・回転中心・倍率の中心」として働く一点
- 範囲選択直後はおおむね選択範囲の中心付近に自動配置される
- 基準点を変えるには範囲選択モードまたは変形指示モードで「基準点変更/基点変更」を左クリック → 新位置を指示
- 通り芯交点・柱芯のような正確な位置に置きたい場合は 右クリック で読取点にスナップ
- 倍率・回転・数値位置で変形する場合は基準点が結果を決めるため、必ず意図した位置に置き直す
- 「動かさない通り芯」「基準階のFL」「回転中心の柱」を基準点として明示的に指定する習慣が、実務での精度向上につながる