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楕円の作図(扁平率・傾き指定)
このコマンドでできること
Jw_cadの「円」コマンドで、コントロールバーの「扁平率」欄に1以外の数値を入れると、真円ではなく楕円が描けます。さらに「傾き」欄に角度を入れれば、長軸を任意の方向に向けた斜めの楕円まで一発で描けます。住宅設計の楕円型ダイニングテーブル、ホール装飾の楕円柱、エントランスの楕円アーチ、円形階段の見上げ図、曲面ガラスを真上から見た投影楕円など、図面の中で「丸を平たくつぶした形」が必要な場面はすべてこの操作でカバーできます。
背景: Jw_cadでは円・円弧・楕円・半円・3点指示・多重円のすべてが「円弧」コマンドに統合されています。楕円は専用コマンドとして独立しているわけではなく、円コマンドのコントロールバーにある「扁平率」入力欄に1以外の値を入れた状態で円を描くと、結果が楕円になる、という設計です。そのため起動方法・基本操作・読取点の扱いはすべて円コマンドと共通で、扁平率と傾きの2つの入力欄だけが楕円固有の指定項目になります。
注意: この記事は円コマンドの「扁平率」「傾き」入力欄を併用した楕円作図に絞った内容です。円コマンドの起動方法・中心点と円周点で描く基本手順・9点基準・中央/外側切替などは 円コマンドの基本(中心・半径指定) を参照してください。既存の線・円に接する楕円(接楕円)は別コマンドで、接楕円(3点指示・3点半楕円)/接楕円(菱形内接・平行四辺内接) で扱います。
楕円作図の流れ(全体像)
円コマンドで楕円を描く場合、先にコントロールバーで扁平率と傾きを入力してから中心点・円周点をクリックします。最初に全体像をつかんでおきましょう。
楕円作図サマリー(全6ステップ)
| # | 操作 | 所要 |
|---|---|---|
| 1 | 円コマンドを起動(左ツールバーの「○」) | 数秒 |
| 2 | 「扁平率」欄に値を入力(例: 0.5 または 50) | 数秒 |
| 3 | 必要なら「傾き」欄に角度を入力(例: 30) | 数秒 |
| 4 | 中心点を左クリック(読取点なら右クリック) | 数秒 |
| 5 | マウスを動かして仮表示の楕円サイズを確認 | 数秒 |
| 6 | 円周点を左クリック(読取点なら右クリック)で確定 | 数秒 |
合計: 慣れれば10〜15秒で1つの楕円を確定できます。
画像準備中 — 楕円作図の全体フロー(扁平率入力→傾き入力→中心点→円周点→確定)
扁平率とは(短軸/長軸の比)
楕円は「長軸(楕円のいちばん長い直径)」と「短軸(長軸に直交するいちばん短い直径)」の2つの軸を持つ図形です。Jw_cadの「扁平率」は、長軸の長さに対する短軸の長さの比率を表します。
| 扁平率 | 意味 | 形 |
|---|---|---|
1(または 1.0) | 短軸=長軸(つまり真円) | 正円 |
0.5 | 短軸が長軸の半分 | 横長の楕円(縦に半分つぶれた形) |
0.2 | 短軸が長軸の20% | かなり扁平した細長い楕円 |
2 | 短軸が長軸の2倍(=縦長) | 縦長の楕円 |
1.5 | 短軸が長軸の1.5倍(=縦長) | やや縦長の楕円 |
背景: 数学・物理の世界で言う「扁平率」は地球の形状などで使う
(a-b)/aの式で表されますが、Jw_cadの扁平率はもっと素朴に短軸÷長軸の比そのものを入れる仕様です。「長辺方向の半径に対して、垂直方向の半径が何倍か」と読み替えると分かりやすくなります。
値域と入力ルール
Jw_cadの「扁平率」欄では、正の数と負の数の両方が受け付けられ、整数表記と小数表記で扱いが異なる仕様になっています。
| 入力例 | 解釈 | 結果 |
|---|---|---|
0.5 | 割合(短軸÷長軸 = 0.5) | 短軸が長軸の半分の楕円 |
50 | パーセント(50%=0.5と同じ) | 短軸が長軸の半分の楕円(0.5と同じ結果) |
1 または 1.0 | 真円扱い | 正円が描かれる |
2 | 200%=2倍 | 短軸が長軸の2倍(縦長楕円) |
1.5 | 150%=1.5倍 | 短軸が長軸の1.5倍 |
-0.5 または -50 | 負の値(短軸基準) | 絶対値が短軸方向の半径として扱われる |
背景: 「
0.5と50がどちらも同じ結果になる」のはJw_cad特有の仕様で、1.0未満の値は割合、1.0以上の値はパーセントとして解釈されます。設計者の好みで小数派・整数派どちらでも書けるようにした親切設計、と理解しておくと迷いにくくなります。慣れるまでは「割合(小数)」か「パーセント(整数)」のどちらかに統一して使うのがおすすめです。
要確認:
1と1.0がどちらも真円扱いになるか、また100(100%)が真円扱いになるかは実機で確認します。仕様上は同等の扱いになる側が自然です。
負の値(短軸基準)の意味
扁平率欄に負の値(例: -50)を入れると、入力した絶対値(50)が長軸ではなく短軸方向の半径として扱われます。つまり中心点指定後にマウスで決める「円周点までの距離」の解釈が、長軸方向ではなく短軸方向に切り替わります。
| 入力 | マウスで決める距離の解釈 |
|---|---|
0.5(または 50) | 長軸方向の半径=マウスとの距離 |
-0.5(または -50) | 短軸方向の半径=マウスとの距離 |
Tips: 短軸の寸法を厳密に決めたい場面(例: 楕円型のテーブル天板で、短径800mmが必須)では、扁平率を負の値で入れて短軸を主役にすると寸法管理が楽になります。逆に長軸寸法を主役にしたい場合は、通常どおり正の扁平率で入れます。
画像準備中 — 扁平率 `0.5`(横長楕円)と `2`(縦長楕円)の作図結果比較
楕円を描く操作手順(傾きなし)
まず傾きなし(水平・垂直に揃った楕円)の手順を見ていきます。
手順1: 円コマンドを起動
左側ツールバーの「○」アイコンを左クリック、またはメニューバー「作図」→「円弧」で円コマンドを起動します。コントロールバーが円コマンド用の表示に切り替わります。
画像準備中 — 円コマンド起動直後のコントロールバー表示
手順2: 「扁平率」欄に数値を入力
コントロールバーの「扁平率」テキストボックスを左クリックしてカーソルを置き、扁平率を入力します。横に2倍ほど長い楕円なら 0.5(または 50)、縦に1.5倍長い楕円なら 1.5(または 150)を入れます。
Tips: 入力後はEnterキーを押す必要はありません。そのまま作図ウィンドウへマウスを動かして、中心点指示に進めます。
画像準備中 — コントロールバー「扁平率」欄に `0.5` を入力した状態
手順3: 中心点を指示
楕円の中心にしたい位置にマウスポインタを動かし、左クリックします(既存の点や線端に合わせたい場合は右クリックで読取点)。これが楕円の中心点になります。
画像準備中 — 中心点位置で左クリックする様子
手順4: 仮表示の楕円を確認しながら円周点へ移動
中心点を指示した直後から、扁平率に応じた仮表示の楕円(赤い細線)が表示されます。マウスを動かすと楕円の長軸方向の長さ(半径)がリアルタイムで変化し、扁平率は固定されたまま縦横比だけが保たれた楕円が広がります。
画像準備中 — 中心点から広がる扁平率0.5の赤い仮表示楕円
手順5: 円周点を指示
楕円の長軸の端点としたい位置で左クリック(読取点に合わせたい場合は右クリック)します。これで仮表示の楕円が確定し、現在の書込線色・線種・書込レイヤで楕円が作図されます。中心点と円周点の距離が長軸方向の半径になり、その半径に扁平率を掛けた値が短軸方向の半径になります。
画像準備中 — 円周点を左クリックして楕円が確定した状態
手順6: 続けて次の楕円を描く
楕円が1つ確定すると、円コマンドはそのまま次の楕円を待ち受ける状態に戻ります。「扁平率」欄の値も保持されたままなので、同じ扁平率の楕円を続けて何個でも描けます。違う扁平率に切り替えたい場合は、再び「扁平率」欄をクリックして数値を書き換えます。
Tips: 楕円作図が終わって真円作図に戻りたい場合は、「扁平率」欄を空欄に戻す(または
1を入れる)必要があります。空欄に戻す手順は記事末尾の「扁平率・傾きのクリア」節を参照してください。
楕円を傾けて描く(傾き指定)
斜めに振った楕円を描く場合は、扁平率に加えて「傾き」欄に角度を入力します。
「傾き」が指定するもの
楕円の「傾き」は、長軸の方向を水平(X+方向)から何度回転させるかを指定するパラメータです。傾き=0のとき長軸は水平、傾き=30のとき長軸は反時計回りに30度回転した方向、という関係になります。
| 入力例 | 意味 | 楕円の見え方 |
|---|---|---|
0 | 傾きなし(長軸が水平) | 横向きの楕円 |
30 | 反時計回り30度 | 右上がりに30度傾いた楕円 |
45 | 反時計回り45度 | 右上がりに45度傾いた楕円 |
90 | 反時計回り90度 | 長軸が垂直方向(縦向き楕円) |
-30(または 330) | 時計回り30度 | 右下がりに30度傾いた楕円 |
135(または -45) | 反時計回り135度 | 左上がりに45度傾いた楕円 |
背景: Jw_cadの「傾き」は反時計回りがプラスで、線コマンド・矩形コマンドの「傾き」と完全に共通仕様です。建築の方位角(北基準で時計回り)とは回転方向が逆なので、最初は混乱しがちです。詳しい注意点は 角度を指定した線の作図 を参照してください。
Tips: 同じ傾きを2通りで表現できます(例:
135と-45は同じ向き)。0〜180度のプラス値で表す流派と、マイナス値も併用して-90〜+90の範囲で表す流派があります。実務では一貫したルールを社内で決めておくと、図面共有時の見直しが楽になります。
傾き付き楕円の操作手順
- 円コマンドを起動
- コントロールバーの「扁平率」欄に数値を入力(例:
0.5) - コントロールバーの「傾き」欄に角度を入力(例:
30) - 中心点を左クリック(読取点なら右クリック)
- マウスを動かして仮表示の楕円サイズを確認
- 円周点(傾いた長軸の端点)を左クリック(読取点なら右クリック)で確定
画像準備中 — 「扁平率=0.5」「傾き=30」で描いた斜めの楕円
注意: 「傾き」欄に値を入れたまま扁平率を空欄にすると、形状は真円のままですが、作図時の基準点(9点基準)の方向だけが傾きに沿って回転します。真円の見た目には影響しないため違いに気づきにくいですが、9点基準を使った位置合わせをしている場合は意図しないズレの原因になります。真円に戻す際は「扁平率」「傾き」の両方を空欄に戻すのが安全です。
9点基準(基点)と楕円
円コマンドの「基点」ボタンによる9点基準は、楕円作図でもそのまま使えます。ただし、楕円の場合は**外接する仮想の四角形(楕円外接矩形)**を考えて、その9か所が基準点候補になります。
| 縦\横 | 左 | 中 | 右 |
|---|---|---|---|
| 上 | 左上 | 中上 | 右上 |
| 中 | 左中 | 中中(初期) | 右中 |
| 下 | 左下 | 中下 | 右下 |
傾きと9点基準の関係
楕円に「傾き」を指定した場合、9点基準の枠そのものも傾きに沿って回転します。「右上」は傾いた楕円外接矩形の右上の角を意味し、画面上の絶対的な右上ではありません。
要確認: 楕円作図時の「基点」が、扁平・傾きを反映した楕円外接矩形に基づいて切り替わるかは実機で確認します。仕様上は反映される側が自然です。
画像準備中 — 「扁平率=0.5」「傾き=30」で9点基準を切り替えた仮表示楕円
Tips: 楕円型のテーブルや看板を、壁や柱に接して配置したい場面では、9点基準を活用すると一発で位置決めできます。たとえば「楕円の左端を壁芯に合わせる」なら基準点を「左中」に切り替え、壁芯位置を右クリックすれば、楕円の左端がぴったり壁芯に乗ります。
派生パターン:扁平率の使い分け事例
横長楕円(扁平率 < 1)
0.5 や 0.7 など1未満の値を入れると、長軸が水平・短軸が垂直の横長楕円になります。楕円型のダイニングテーブル、横長の鏡、看板の地図記号など、図面で「横に伸びた楕円」が必要な場面で使います。
縦長楕円(扁平率 > 1)
1.5 や 2 など1より大きい値を入れると、長軸が垂直・短軸が水平の縦長楕円になります。ただし仕様上は「長軸が水平」が基準なので、縦長楕円は内部的に「短軸を水平基準とした横長楕円」と等価です。実用上は気にせず数値で指定して問題ありません。
円形階段の見上げ図(短径基準)
円形階段を真上から見下ろした図ではなく、真横(吹き抜けの上から)から見た楕円として描く場面があります。階段の踏み板や手すり笠木の見え寸法は、視点からの距離で決まる短径が主役のため、扁平率を負の値(例: -0.6)で入れて短径基準で描くのがコツです。
曲面ガラス・湾曲壁の投影楕円
円筒形のガラス壁や湾曲した曲面壁を斜め上から見下ろした投影図を描くと、円筒の上端は楕円として投影されます。視点角度に応じて扁平率は変わりますが、典型的なパース図では扁平率 0.3〜0.5 の横長楕円が頻出します。
楕円アーチの輪郭
エントランスや内装デザインで、半円ではなく楕円形のアーチ(高さが幅より低めの優美なアーチ)を描く場面では、扁平率 0.5〜0.7 程度で描いた楕円の上半分(円弧モード)を使います。楕円の上半分だけ作図する場合は、円弧モード(コントロールバー「円弧」チェック)と組み合わせます。詳しくは 円弧の基本 を参照。
真円・接楕円との使い分け
楕円的な形状を描く方法は状況によって最適解が変わります。代表的な選択肢を整理します。
| 状況 | 選ぶ手段 | 理由 |
|---|---|---|
| 真円を描きたい | 円コマンド(扁平率欄を空欄) | 専用記事 円コマンドの基本 を参照 |
| 楕円の長径・短径の比が決まっている | 円コマンド「扁平率」+ マウスでサイズ決定 | この記事で解説 |
| 短径を厳密に指定したい | 円コマンド「扁平率」を負の値で入れる | 短軸基準で半径を取れる |
| 斜めに振った楕円が必要 | 円コマンド「扁平率」+「傾き」 | この記事で解説 |
| 既存の3点を通る楕円を描きたい | 接楕円(3点指示) | 接楕円(3点指示・3点半楕円) |
| 既存の菱形・平行四辺形に内接する楕円 | 接楕円(菱形内接・平行四辺内接) | 接楕円(菱形内接・平行四辺内接) |
PERSCの推奨: 楕円型の家具・装飾要素は、規定の長径・短径が先に決まっていることが多いです。設計図書の家具リストや建具表に寸法が書かれている場合、扁平率は「短径÷長径」を電卓で計算して小数で入れるのが確実です。たとえば長径1800mm・短径900mmの楕円テーブルなら、扁平率
0.5で長径方向の半径900mmを入力するだけで一発配置できます。
扁平率・傾きのクリア(真円作図に戻す)
「扁平率」欄や「傾き」欄に一度数値を入れると、円コマンドを抜けて再び戻ったときも、その値が残った状態になることがあります。意図せず楕円が描かれて困るのを防ぐため、クリア手順を覚えておきましょう。
クリア手順
- 「扁平率」入力欄をマウスでクリックしてカーソルを置く
Ctrl + Aで全選択 →DeleteまたはBackspaceで削除- 「傾き」入力欄も同じ手順で空欄に戻す
- 両方とも空欄になったことを確認してから真円作図を始める
または、
- 「扁平率」入力欄をダブルクリックして中身を全選択
DeleteまたはBackspaceで削除(傾き欄も同様)
要確認: 「扁平率」「傾き」値がJw_cad終了時まで保持されるか、円コマンドを抜けて再起動すると自動クリアされるかを実機で確認します。線コマンドの「傾き」と円コマンドの「傾き」が同じ値を共有するかどうかも合わせて検証してください。
注意: 「扁平率」欄が空欄でないまま円を描こうとすると、入力済みの扁平率で楕円が固定されます。「真円を描いているはずなのに、なぜか平たい円になる」ときは、まず「扁平率」欄が空かを確認してください。9点基準の位置がずれて見える場合は、「傾き」欄が残っている可能性も合わせて確認します。
画像準備中 — 「扁平率」「傾き」欄に値が残っている状態と、クリア後の空欄状態の比較
楕円は「ひとつの図形」として作図される
楕円コマンドで描いた楕円は、円コマンドの真円と同じくひとつの図形としてデータに記録されます。範囲選択コマンドで楕円をかこむと、1要素として選ばれます。
| 作図方法 | データ上の扱い |
|---|---|
| 円コマンド(真円) | ひとつの円として記録(半径・中心座標) |
| 円コマンド(扁平率指定の楕円) | ひとつの楕円として記録(長径・短径・中心座標・傾き) |
| 円コマンド(円弧モード) | ひとつの円弧として記録 |
背景: 楕円が単一要素として扱われる仕様のため、複写・移動・消去はワンクリックで効きます。一方で、楕円の一部だけを編集する(半分だけ消す、線種を変える)といった操作は、楕円弧として描き直すか部分消去で対応する必要があります。詳しくは 円弧の基本 や 部分消去 ※準備中 を参照。
要確認: 楕円が単一要素として記録されるかは実機の範囲選択で確認します。
描いた楕円の中心点を読み取る
円コマンドで描いた楕円は、後から中心点を読取点として正確に拾えます。楕円の中心に十字や引き出し線を入れたい、楕円どうしの中心を結ぶ線を引きたい、といった作業で必須のテクニックです。
| 方法 | 操作 |
|---|---|
| メニューバー | 「設定」→「中心点取得」を選択し、楕円のフチを左クリックまたは右クリック |
| クロックメニュー | 楕円のフチで右ボタンドラッグ → 3時方向(右)の「中心点取得」を選択 |
詳しくは 読取点の操作(中心点・端点・交点) を参照してください。
Tips: クロックメニューの中心点取得は真円・楕円・円弧すべてに使える共通テクニックです。覚えておくと、楕円型テーブルの中心位置に照明器具を配置する、楕円柱の中心を通り芯と一致させる、といった作業がワンアクションで決まります。
軸角設定との関係
Jw_cadの「軸角」設定(軸角を設定する)を有効にすると、画面の水平・垂直方向そのものが回転した状態になります。この状態で楕円を描く場合、「傾き=0」は軸角に沿った方向として解釈されます(線・矩形コマンドと同じ振る舞い)。
| 軸角 | 「傾き」 | 楕円の長軸方向 |
|---|---|---|
| 0度 | 空欄 or 0 | 画面の水平方向(右向き) |
| 0度 | 30 | 画面の水平から反時計回り30度 |
| 23度 | 空欄 or 0 | 軸角に沿った水平方向(画面上は23度傾いて見える) |
| 23度 | 30 | 軸角の23度に対してさらに30度(合計53度)傾いた方向 |
PERSCの推奨: 敷地や建物が傾いている案件では、最初に軸角を設定してから楕円を描くのが第1選択です。軸角を設定しておけば、楕円の長軸を「敷地に平行」または「敷地に垂直」のどちらかにシンプルに揃えられます。詳しくは 軸角を設定する を参照してください。
要確認: 軸角設定中の「傾き」値が「軸角を含めた絶対角度」か「軸角からの相対角度」かはバージョン差の可能性があります。実機で確認してください。
書込線色・線種との関係
楕円コマンドで作図される楕円は、現在の書込線色・線種で描かれます。違う種類の楕円(実線の家具輪郭、破線の見え隠れ、点線の補助線など)を描き分けたい場合は、楕円作図の操作前に書込線属性を切り替えます。書込線属性の確認・変更方法は 線属性(線色・線種)の設定 を参照してください。
Tips: 楕円型ダイニングテーブルの天板輪郭は実線、テーブル下の脚(隠れ線)は破線、というように線種を使い分けると、図面の情報量が一気に増えます。1つの家具に対して扁平率は同じまま、線種だけ切り替えて2つの楕円を重ねる、という描き方が実務でよく使われます。
実務での使い方 ★PERSC独自
楕円型ダイニングテーブル・楕円カウンター
住宅・店舗の家具配置図でもっとも頻度が高い楕円は、楕円型のテーブル天板です。家族が向かい合って座っても圧迫感が少ない楕円型テーブルは、長径1500〜2000mm/短径800〜1100mmの寸法帯が標準的です。長径1800mm・短径900mmなら扁平率 0.5、長径1600mm・短径1000mmなら扁平率 0.625 で描きます。
例: 長径1800mm・短径900mmの楕円テーブル
- 円コマンドを起動
- 「扁平率」に
0.5を入力 - 「傾き」が空欄であることを確認
- テーブル中心位置を右クリックで読取り
- 中心から右方向に900mm離れた位置を右クリック(または座標指定)で円周点指示
これでダイニングルームの中心に楕円テーブルが一発配置できます。
ホール・店舗装飾の楕円柱
商業施設のエントランスホール、ホテルロビー、店舗のディスプレイコーナーなどで、断面が楕円形の装飾柱を見かけます。意匠的に方向性を持たせたい場合(向きを揃えたい・アプローチ方向に長軸を向けたいなど)に楕円断面が選ばれます。
楕円柱の平面図は、扁平率指定楕円で描きます。長径600mm・短径400mmなら扁平率 0.667、長径800mm・短径500mmなら扁平率 0.625 といった寸法が一般的です。
PERSCの推奨: 楕円柱は意匠図の見せ場になりやすい要素です。柱の長軸方向を建築主軸に揃えたいか、エントランスのアプローチ方向に揃えたいかを施主と打ち合わせて決めましょう。「傾き」値を社内で共有しておくと、別のプランナーが平面図を引き継いだときに迷いません。
エントランスの楕円アーチ
商業施設や住宅の玄関アーチを楕円形にすると、半円アーチとは違う優美な印象になります。アーチの開口幅が2400mm・高さが1500mmなら、扁平率 0.625 の楕円の上半分(円弧モード併用)として描けます。
楕円アーチ作図の流れ
- 円コマンドを起動
- 「扁平率」に
0.625を入力 - 「円弧」チェックを入れて円弧モードに切り替え
- アーチ開口の中心を中心点として指示
- 円弧の始点・終点をアーチ脚部に合わせる
詳しい円弧モードの使い方は 円弧の基本 を参照。
円形階段・螺旋階段の見上げ図
吹き抜けに設けた円形階段や螺旋階段を、下から見上げた展開図として描く場面があります。階段の踏み板を真上から見ると同心円ですが、斜め上から見上げる視点になると同心円が同心楕円として描かれます。
実務では、視点高さ・距離から決まる扁平率(典型的には 0.3〜0.5)で同心楕円群を描きます。複数の楕円を中心位置を揃えて並べるため、中心点を読取点として再利用するクロックメニュー右ドラッグ3時方向のテクニックが活躍します。
曲面ガラス・湾曲壁の見え寸法表現
オフィスエントランスの曲面ガラスパーテーション、商業施設の湾曲した飾り壁を斜め上から見下ろしたパース図で表現する場合、円筒形の曲面の上端は楕円として投影されます。
設計初期の検討スケッチでは、扁平率 0.3〜0.4 程度の横長楕円で「見え方の確認」をするのが一般的です。本図ではないため、線種は補助線(細線・点線)で描き、最終的にCG・パースソフトでレンダリングし直すフローになります。
楕円型のサイン・看板・地図記号
外構図・サイン計画図に登場する楕円型サイン(敷地内の案内看板、駐車場番号サインなど)は、サイン台座の輪郭として楕円を描きます。長径600mm・短径300mmの庭園灯台座、長径400mm・短径250mmの番号サインなど、寸法は施設規模に応じて変わります。
地図記号の中にも、楕円形のものがあります(一部の植物記号、施設記号など)。これらを表現する際も、扁平率指定の楕円を活用します。
楕円を傾けた配置(敷地に合わせた家具配置)
敷地境界や建物軸が傾いている案件で、楕円型の家具・装飾を建物軸に揃えたい場合は、「傾き」欄に建物軸の角度を入れて配置します。たとえば軸角を23度に設定していて、楕円テーブルの長軸を建物に平行にしたい場合、軸角設定中なら「傾き=0」で配置するだけで自動的に軸角23度の方向に長軸が向きます。
軸角を使わず個別に傾けたい場合は、「傾き=23」を直接入力します。
つまずきポイント・対処 ★PERSC独自
Q: 扁平率を入力したのに真円のままになる
→ 「扁平率」欄に値が空欄のままか、または 1(または 1.0)が入っている可能性があります。1 は真円扱いの値です。横長楕円なら 0.5 や 50 のように、1以外の値を入れてください。
Q: 横長楕円のつもりが縦長楕円になった(または逆)
→ 扁平率 0.5 は短軸が長軸の50%、つまり短軸を縦にした横長楕円が標準です。縦長にしたい場合は扁平率 2(短軸が長軸の200%=逆転して縦が長くなる)を入れるか、傾きに 90 を入れて横長楕円を縦に回転させてください。短径を厳密に決めたい場合は負の値(例: -0.5)を使うと短軸基準で寸法が取れます。
Q: 0.5 と 50 で結果が同じ?
→ Jw_cadの扁平率欄では、1未満の値は割合、1以上の値はパーセントとして解釈されます。0.5 と 50 はどちらも「短軸÷長軸=0.5」を意味するので、結果が同じ楕円になります。社内で記法を統一する場合、計算ミスを防ぐ意味では小数(0.5)の方が誤解が少ない印象です。
Q: 楕円の傾きを変えたのに、見た目が同じに見える
→ 扁平率が空欄または 1 だと、形状は真円のままで「傾き」値は基準点(9点基準)の方向だけを変える挙動になります。傾きを反映させた楕円を描きたいなら、まず扁平率を1以外の値に設定してください。
Q: 思ったのと逆向きに楕円が傾く
→ Jw_cadの「傾き」は反時計回りがプラスです。建築の方位角(北基準で時計回り)と回転方向が逆なので、最初は混乱しがちです。時計回りに傾けたい場合は、マイナスの値(例: -30)を入れるか、360 - 角度(例: 330)を入れてください。
Q: 楕円が予想と違う角度に傾いている
→ 軸角が0以外に設定されている可能性があります。軸角が23度に設定されている状態で「傾き=30」を入れると、画面の絶対角度では53度(軸角23度+傾き30度)傾いた楕円が描かれることがあります。意図しない場合は、軸角を0に戻してから楕円コマンドを使い直してください。軸角の確認・解除手順は 軸角を設定する を参照。
Q: 同じ扁平率の楕円を続けて描きたい
→ 円コマンドを抜けない限り「扁平率」「傾き」値は保持されます。柱の連続作図など、同じ寸法の楕円を複数描く場合は、最初に1回だけ扁平率と傾きを入力すればOKです。違う扁平率に切り替えたいタイミングだけ、テキストボックスを打ち直します。
Q: 楕円の長径・短径を寸法で直接指定したい
→ Jw_cadの円コマンドには「長径●mm・短径●mm」と直接2つの寸法を入れる入力欄はありません。「半径」欄に長径÷2の値を入れ、「扁平率」欄に短径÷長径の比を入れるのが正解です。たとえば長径1800mm・短径900mmの楕円なら、半径=900、扁平率=0.5 です(半径欄の数値はマウスを使わずに長径方向の半径を確定します)。
要確認: 半径指定楕円が標準ワークフローとして動作するかは実機で確認します。
Q: 楕円を描き始めたあとでキャンセルしたい
→ Escキー(操作の巻き戻し)を押すと、現在の指示状態がキャンセルされ、中心点指示前の状態に戻ります。間違って中心点をクリックしてしまった場合の救済策として覚えておきましょう。
Q: 真円作図に戻したいのに、毎回楕円が出てしまう
→ 「扁平率」欄に値が残ったままになっている可能性が高いです。「扁平率」欄をクリック → Ctrl+A → Delete で空欄に戻してから真円を描いてください。「傾き」欄も合わせて空欄に戻すと、9点基準の方向もリセットされ、真円作図が完全に元の状態に戻ります。
Q: 楕円の片側だけ消したい・半分だけ違う線種にしたい
→ 楕円は単一要素として記録されるため、そのままでは部分編集ができません。半分だけ消したい場合は部分消去コマンドで対象範囲を切り取るか、円弧モード(コントロールバー「円弧」チェック)で楕円弧として描き直します。詳しくは 円弧の基本 を参照。
Q: 楕円を菱形や3点に内接させたい
→ それは接楕円コマンドの担当です。3点を通る楕円なら 接楕円(3点指示・3点半楕円)、菱形・平行四辺形に内接する楕円なら 接楕円(菱形内接・平行四辺内接) を参照してください。これらは円コマンドではなく、左ツールバー「作図(2)」の専用コマンドから起動します。
関連項目
- 円コマンドの基本(中心・半径指定) — 円コマンドの起動方法・基本操作・9点基準・中央/外側切替
- 多重円コマンド — 同心円の一括作図(楕円との組み合わせも可能)
- 円弧の基本 — 楕円弧(楕円の一部)の作図
- 3点指示円 — 3つの点を通る円
- 半円コマンド — 2点を直径とする半円
- 接楕円(3点指示・3点半楕円) — 3点を通る楕円・3点半楕円
- 接楕円(菱形内接・平行四辺内接) — 菱形・平行四辺形に内接する楕円
- 角度を指定した線の作図(15度毎含む) — 「傾き」入力UI全般・負角度・小数点入力の詳細仕様
- 角度を指定した矩形の作図 — 矩形側の傾き指定(同UIの併用記事)
- 軸角を設定する — 図面全体を回転させた状態で作図する
- 線属性(線色・線種)の設定 — 書込線色・線種の切替
- 読取点の操作(中心点・端点・交点) — 楕円の中心点取得
- クロックメニュー入門 — 中心点取得・コマンド起動
まとめ
- 楕円は円コマンドで描く。コントロールバーの「扁平率」欄に1以外の数値を入れた状態で中心点・円周点をクリックすると、楕円が確定する
- 扁平率は短軸÷長軸の比。
0.5と50はどちらも「短軸が長軸の半分」を意味し、1未満は割合・1以上はパーセントとして解釈される - 負の値(例:
-0.5)は短軸基準で半径を取る。短径を厳密に指定したい場面で使う - 「傾き」欄に角度を入れると、楕円の長軸を任意の方向に振れる。反時計回りがプラス、時計回りはマイナス(または
360-x) - 楕円作図が終わって真円に戻すときは、「扁平率」「傾き」両方の欄を空欄にクリアする。値が残ったままだと意図しない楕円・基準点ズレが発生する
- 既存の3点を通る楕円、菱形・平行四辺形に内接する楕円は別コマンド(接楕円)で扱う