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未検証

多重円の作図

このページでできるようになること

Jw_cadの円コマンドにある「多重円」入力欄を使って、**中心点を共有する入れ子状の円(同心円)**を一度に作図できるようになります。コントロールバーの「多重円」欄に数値を入れるだけで、最大数十重の同心円を1ストロークで描けるようになり、吹抜の見え隠れ表現・円形階段の段板・回転体の主要円リング・方位記号の二重円リングといった建築実務でよく出てくる「同じ中心の円が複数」というシーンを最短手順で処理できます。

背景: 同心円は線コマンドや通常の円コマンドの繰り返しでも描けますが、中心点を毎回読取点で拾い直すと手数が膨らみがちです。「多重円」入力欄は、中心点1回・外周指定1回の計2クリックで、指定した数の円を一度に確定させる仕組みになっています。

注意: この記事は円コマンドの「多重円」入力欄に絞った内容です。円コマンドの起動方法・基本作図(中心と円周)は 円コマンドの基本 を参照してください。多重「矩形」(入れ子の四角)は別コマンドで、多重矩形・面取り矩形 で扱います。


多重円の作図サマリー(全5ステップ)

多重円は、コントロールバーで数値を1つ入れてから中心点と外周点をクリックする流れです。基本の円作図に「数値入力」が1つ加わるだけなので、慣れれば10秒以内で1組の同心円が作図できます。

#操作所要
1円コマンドを起動(ツールバー「○」、または「作図」→「円弧」)数秒
2コントロールバー「多重円」欄に数値を入力(例: 3数秒
3円の中心点で左クリック(読取点なら右クリック)数秒
4マウスを動かして外周(一番外の円)の大きさを決める数秒
5外周点で左クリック(読取点なら右クリック)して確定数秒

「多重円」入力欄の位置と基本の入力ルール

円コマンドを起動すると、画面上部のコントロールバーに「多重円」入力欄が表示されます。コントロールバーには「円弧」「半径」「扁平率」「傾き」「基点」「半円」「3点指示」などの項目が並んでおり、「多重円」はその中の数値入力ボックスです。

要確認: 「多重円」欄の正確なラベル文言と表示位置は実機で確認します。バージョンや解像度によっては「多重」と省略表示される可能性も含めて検証してください。

「多重円」欄に入力できるのは1つの数値です。入力した数値の符号と整数/小数で、描かれる多重円の挙動が変わります。次の3パターンを押さえれば、実務で出てくる同心円のほとんどはカバーできます。

入力値完成する円用途のイメージ
正の整数(例: 3半径差が等分された3重円一定間隔のリング・段板・年輪表現
正の小数(例: 3.5整数部=円の数、小数部=最小円の比率中心側に小さい円を寄せた装飾的なリング
負の数(例: -502重円のみ。絶対値が内側との厚み(mm)円形壁・パイプ断面・トラック外周の二重線

正の整数を入れたとき: 等間隔の同心円

「多重円」欄に正の整数を入れると、入力した数の円が、外周円の半径を等分した間隔で同心円状に作図されます。

入力例と挙動

  • 3 → 3重円(外周円とその内側に2本、合計3本の円)。各円の半径差は外周円の半径の3分の1ずつ
  • 5 → 5重円。各円の半径差は外周円の半径の5分の1ずつ
  • 10 → 10重円。各円の半径差は外周円の半径の10分の1ずつ

操作の手順

  1. 円コマンドを起動します
  2. コントロールバー「多重円」に整数(例: 3)を入力します
  3. 中心にしたい位置で左クリック(読取点なら右クリック)します
  4. マウスを動かすと外周円と内側のリングが仮表示されます。希望の外周サイズになる位置で左クリック(読取点なら右クリック)します
  5. 多重円が確定します

Tips: 等間隔の多重円は、ターンテーブル・年輪・同心円ハッチングのような「均等な放射状の表現」に向いています。手作業で1本ずつ円コマンドを繰り返すよりも、リング数が多くなるほど効果が大きくなります。10本以上の同心円を一気に描く場面では、線コマンドで1本ずつ描く時間の差が分単位で出ます。


正の小数を入れたとき: 中心側のリング比率を変える

「多重円」欄に正の小数を入れると、整数部が円の本数、小数部が最小円(最も内側の円)の半径割合として解釈されます。

入力例と挙動

入力値円の本数内側のリング比率
33本中心から 1:1:1(等間隔)
3.53本中心から 0.5:1:1 (最小円が半分の幅)
4.254本中心から 0.25:1:1:1 (最小円が外側の1/4幅)

仕組みの読み解き方

小数部 0.5 は「最小円の半径が、隣り合う円の間隔に対して 0.5 倍」という意味です。3.5 の場合、外周から 1:1:0.5 の比率で円が割り当てられるため、中心側に「やや内寄りの小さい円」がぽつんと加わるイメージになります。

背景: 小数部の比率指定は、「中心側に小さな目印円を1本追加したい」という装飾的なシーンで効きます。たとえば方位記号の二重円リングのうち、中心の点を線で描くのではなく小さな円として強調したい場合などに、2.3 のような値で「外周+1リング+中心の小円」をひとまとめに描けます。

要確認: 小数部の比率計算が「中心から 小数部値:1:1:…」で外周まで割り付けられるか、逆に「外周から 1:1:…:小数部値」かを実機で再現確認します。s-projects記述では中心から外側に向けて 0.5:1:1 と書かれていますが、画像実物で確認するのが確実です。


負の数を入れたとき: 2重円+厚み(mm)指定

「多重円」欄に負の数を入れると、出力は常に2重円のみになります。絶対値(マイナスを取った値)が、内側の円と外周円の**半径差(厚み)**として実寸ミリで適用されます。

入力例と挙動

入力値完成する円用途のイメージ
-50外周円と内側円の2重。半径差50mm厚さ50mmの円形壁・配管断面
-100半径差100mmの2重円厚さ100mmの構造壁・トラック外周の二重線
-12.5半径差12.5mmの2重円12.5mm厚のパイプ断面

仕組みの読み解き方

正の値が「何本の円を等分配置するか」だったのに対し、負の値は「外側と内側の差を実寸ミリで指定する」という別ルートになります。円形壁・パイプ・トラックのように「内径と外径の差が決まっている」要素を描くときに、外径だけマウスで決めて差は数値で固定する、という使い方が一番自然です。

Tips: 負の値は実寸ミリで評価されます。1/100の縮尺で作図していても、-100 と入れれば「実寸100mmの厚み」になります。縮尺をかけた小さな数値(-1 など)を入れる必要はありません。

要確認: 負の小数(例: -12.5)が許容されるかは実機で要確認です。s-projects記述では「小数も可能」とされています。


入力値が残るときのクリア方法

「多重円」欄に一度数値を入れると、円コマンドを抜けて再び円コマンドに戻ったときも、その値が残った状態になることがあります。次の図面で意図せず多重円が描かれて「単純な円が1本描けない」と詰まることがあるため、クリア手順を覚えておきましょう。

クリア手順

  1. 「多重円」入力欄をマウスでクリックしてカーソルを置く
  2. Ctrl + A で全選択Delete または Backspace で削除
  3. 空欄になったことを確認

または、

  1. 「多重円」入力欄をダブルクリックして中身を全選択
  2. Delete または Backspace で削除

別の値に書き換える場合

クリアしてから入力し直すよりも、全選択(Ctrl+A またはダブルクリック)から直接タイプしたほうが速いです。全選択された状態でキー入力すると元の数値が上書きされます。

注意: 「多重円」欄が空欄でないまま中心点をクリックすると、ドラッグの動きに関係なく入力済みの数値で多重円が固定されて作図されます。「単純な円1本だけ描きたいのに勝手に多重円になる」ときは、まず「多重円」欄が空かどうかを確認してください。

要確認: 「多重円」欄の値がJw_cad終了時まで保持されるか、コマンド切替で自動クリアされるかを実機で確認します。


半径指定・基点・扁平率との併用

「多重円」欄は、円コマンドの他のオプションと組み合わせて使えます。

半径指定との併用

コントロールバー「半径」欄に数値を入れた状態で「多重円」欄にも数値を入れると、外周円の半径が固定された多重円を1クリックで配置できる挙動になることが想定されます。中心点を指示するだけでマウスドラッグなしに多重円が確定するため、「半径500mmの3重円を5箇所に同じサイズで」というような繰り返し配置に向きます。

要確認: 「半径」と「多重円」の同時入力時の優先順位・挙動を実機で確認します。半径欄が指定の最終形になるか、多重円の外周が半径欄の値になるか、を画像と数値の両方で再現してください。

基点(9点基準)との併用

コントロールバー「基点」を使うと、中心点以外(円周の上下左右9点)を基準に円を配置できます。基点を変えた状態で多重円を作図すると、外周円の基点位置がクリック点に来る形で多重円全体が配置される動きが想定されます。基点を「外側」にした状態の多重円は、円形階段や塔の平面で「外周ラインだけを通り芯に合わせたい」場合に使えます。

要確認: 「基点」9点指示と「多重円」の併用時、基点が外周円に適用されるか全多重円に適用されるかを実機で確認します。

扁平率・傾きとの併用

扁平率」と「傾き」を併用すると、楕円の入れ子(多重楕円リング)が描けます。陸上トラック・楕円形のテーブル・楕円ホールの平面で、外周と内周のラインを同時に確定させる場面で効きます。

要確認: 「扁平率」「傾き」と「多重円」を組み合わせた場合に、各円すべてが同じ扁平率・傾きで描かれるかを実機で確認します。


多重円のデータ上の扱い

多重円コマンドで描いた円は、それぞれ独立した円要素として作図されます。範囲選択コマンドでかこむと、円の本数ぶんが個別に選択され、1本だけ消去・複線・線色変更などの編集ができます。

要確認: 多重円が「グループ化された1要素」として作図されるのか、「独立した複数の円要素」として作図されるのかを範囲選択 → 図形情報で実機確認します。s-projects/jwdojoの解説では明記されていません。

背景: データ上は独立した円なので、中の1本だけ線種を点線に変えたり、外周だけ太線にしたりといった作図後のカスタマイズもしやすい設計です。逆に「ひとまとまり」として後から扱いたい場合は、範囲選択 → ブロック化を別途行います。


実務での使い方 ★PERSC独自

吹抜・階段室の見え隠れ表現

住宅平面図で吹抜の中心に円形のシーリングライトや天窓を配置するとき、実形のラインと、上階から見下ろした位置を破線で示すリングを多重円で同時に描くと、図面の見栄えが上がります。実線の外周と破線の内側を同じ中心で揃えるために、多重円コマンドで2本の円を1ストロークで配置し、後から内側だけ破線に切り替えるワークフローが速いです。

円形階段の段板割り付け

円形階段は、外周・蹴上ライン・段鼻ライン・手すり中心ラインなど、同じ中心の円が複数本並ぶ図形の典型です。10〜15段の段板を描くときに、まず多重円で外周とすべての段鼻ラインを等間隔で出してから、不要な円弧を消去・切断していくほうが、1本ずつ円コマンドを繰り返すよりも整然と仕上がります。

方位記号の二重円リング

設計図書の右上などに置く方位記号は、外側の太い円リング・内側の細い円・中心の小さな円という三重構成が多く見られます。多重円欄に 3 または 3.5 を入れて1ストロークで枠を作り、後から外周だけ太線・中心側だけ点線に編集すれば、整った方位記号がすぐに作れます。

回転体の主要円(家具・ターンテーブル・回転扉)

円卓・回転扉・ターンテーブルのような回転体は、ベース円・天板円・支柱断面など複数の同心円で構成されます。最初に多重円で全体の主要円リングを置き、寸法を寸法線で押さえ、必要な部分だけ切断・延長して輪郭を整えていくと、個別に円を引いて中心点をズラす事故を防げます。

円形壁・パイプ・配管断面

設備図の配管・構造図の円形壁断面では、内径と外径の差(厚み)が固定で決まっています。「多重円」欄に負の値(例: -100)を入れて外周だけマウスで決める方法を覚えておくと、配管・円形柱・トラック外周の二重線が一発で確定します。

同心円ハッチング(年輪表現・地形等高線の擬似)

設計説明資料やコンセプト図では、地形の等高線・木の年輪・電波の到達範囲などを等間隔の多重円で表現することがあります。多重円の本数を増やすだけで密度を変えられるため、ラフ案では 5 で粗く、清書では 15 で細かく、といった調整がしやすいです。

PERSCの推奨: 自分の業務でよく使う多重円の組み合わせ(方位記号は 3.5、円形壁は -100、ターンテーブルは 5 等)をチートシート化して手元に置くことをおすすめします。毎回桁数を考え直す時間が消えるため、図面のラフ組みが大幅に速くなります。


つまずきポイント・対処 ★PERSC独自

Q: 円を1本だけ描きたいのに、なぜか多重円になる

→ 「多重円」欄に前回の数値が残っています。ダブルクリックで全選択 → Delete で空欄に戻してから中心点をクリックし直してください。コントロールバーの状態は円コマンドを抜けても保持されるため、別のコマンドから戻ったときに残っている値で誤作図が起きやすいポイントです。

Q: 多重円が描けない・反応しない

→ 円コマンドが起動していない可能性があります。コントロールバーに「半径」「扁平率」「多重円」「3点指示」「基点」などの項目が並んでいるかを確認してください。違うコマンドのコントロールバーが出ている場合は、左ツールバーの「」アイコンを左クリックして円コマンドを再起動します。

Q: 「多重円」に -50 と入れたのに、見えないほど小さい円しか描けない

→ 縮尺の認識違いの可能性があります。「多重円」欄の負の値は実寸ミリとして評価されます。1/100の縮尺で -50 と入れれば、用紙上では0.5mmの厚みになるため、見ためには2本がほぼ重なって見えます。建築一般の壁厚の感覚で -100-150 程度から試してください。

Q: 3.5 の小数指定がイメージ通りにならない

→ 小数部は最小円の比率であって、内側の何本目かを指定するものではありません。3.5 は「3本の円のうち、最小円が外周方向の隣り合う円の間隔の0.5倍」という意味です。「中心から 0.5:1:1 の比率で割り付けられる」と覚えてください。本数を増やしたい場合は整数部を 4 5 などに変えます。

Q: 範囲選択したら多重円がバラバラに選ばれた

→ それが正しい挙動です。多重円コマンドで描いた多重円は、データ上は独立した複数の円として記録されます。「ひとまとまり」として扱いたい場合は、範囲選択 → ブロック化を行います。逆に1本だけ線色・線種を変えたい場合は、独立要素のままのほうが編集しやすくなります。

Q: 「多重円」と「半径」を両方入れたら何も起きない/意図しない動きをする

→ 半径指定(実寸ミリ)と多重円指定の併用は、片方が優先される仕様の可能性があります。挙動が安定しない場合は、まずどちらか片方だけで動作確認してから、用途に応じて使い分けてください。半径固定で多重円を量産したい場合は、半径数値+多重円数値の併用で動くか実機テストを推奨します。

Q: 楕円で多重リングを作りたい

→ 「扁平率」欄に数値(例: 50 で横長楕円)を入れた状態で「多重円」欄に整数を入れると、楕円のリングが等間隔で並ぶ形で作図されます。陸上トラック・楕円形ホールの平面に向く使い方です。

Q: 多重円を描いた後で1本だけ消したい

→ 多重円は独立した円要素なので、消去コマンドの「節間消し(一部消去)」ではなく、消去コマンドで該当の円を1本だけクリックすればその円だけが消えます。隣の円には影響しません。

Q: 多重円の中心がズレる

→ 中心指示時に左クリック(任意点)で適当な位置をクリックしている可能性があります。既存の円や交点に中心を合わせたい場合は、必ず**右クリック(読取点)**で既存の点を拾います。中心点に「点」コマンドであらかじめ目印点を置いておくと、ズレ事故が起きにくくなります。

Q: 「多重円」欄が見当たらない

→ 円コマンドが起動できていないか、コントロールバーが非表示になっています。

  • メニューバー「作図」→「円弧」、またはツールバーの「○」アイコンで円コマンドを起動
  • ステータスバーに「円弧」と表示されているかを確認
  • 「表示」メニューで「コントロールバー」が有効になっているかを確認

詳細は 円コマンドの基本 を参照してください。


関連項目


まとめ

  • 多重円」欄に数値を入れて中心と外周をクリックするだけで、同じ中心の円を一度に作図できる
  • 正の整数は「等間隔のリング本数」、正の小数は「整数部=本数 + 小数部=最小円の比率」、負の数は「2重円+絶対値が厚み(実寸mm)」と覚える
  • 値が残ったまま円作図に入ると単純な円が描けなくなるので、Ctrl+ADelete でクリアする習慣をつける
  • 描かれた多重円は独立した複数の円として扱われるため、1本ずつ線色・線種を変えるカスタマイズが可能
  • 吹抜・円形階段・方位記号・回転体・円形壁といった建築実務の同心円シーンで、手作業の手数を大幅に減らせる