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天空図・天空率
このページでできるようになること
Jw_cadの 天空図 コマンド(メニューバー「その他」→「天空図」、ツールバーの「天空」)を使い、平面図に高さを設定して 天空図(正射影図・等距離射影図) を作図し、天空率(円面積に対する空の見える割合) を計算できるようになります。あわせて、三斜法による天空率の算出、計画建物と適合建物(基準建物)の天空率比較計算、太陽軌跡の重ね描き までを通しで身につけ、道路斜線・隣地斜線・北側斜線の 天空率による緩和 を検討する際の図示作業に対応できます。
背景: 天空率は建築基準法56条7項の規定にもとづき、各種斜線制限(道路斜線・隣地斜線・北側斜線)に適合する代替手段として位置づけられた指標です。測定点から見える天空(空)の割合 を、計画建物と適合建物(斜線制限ぎりぎりの仮想建物)の両方で計算し、計画建物の天空率が適合建物以上であれば斜線制限を緩和できます。Jw_cadは標準で天空図コマンドを内蔵しており、フリーCADながら天空率検討の作図・計算をワンセットで扱えるのが特徴です(制度の詳細は JIS A 0150(建築製図通則)の全体像 ※準備中 や建築基準法解説書で確認してください)。
注意: 本記事は Jw_cadで天空図・天空率の作図を行う方法 の解説であり、建築基準法上の天空率算定の適法性を保証するものではありません。
- 道路斜線・隣地斜線・北側斜線の規制値は、用途地域・特定行政庁の条例・都市計画で異なります
- 天空率の算定結果が法令適合と判断するのは、設計者・確認検査機関・特定行政庁の責任です
- Jw_cadで描いた天空図は 設計検討用 であり、確認申請添付や法令適合証明には別途算定書の作成・専門ソフト・審査機関への事前協議が必要です
関連: 建築基準法施行令第135条の4〜10(天空率) / 特定行政庁・指定確認検査機関への確認
天空図とは何か
天空図は、測定点を中心とした半球状の天空 を平面の円に投影した図です。建物(建築物)が天空をどれだけ遮っているかを視覚的・定量的に示します。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 測定点 | 道路境界線・隣地境界線などから所定距離後退した算定基準点。地盤面の高さで設定 |
| 天空率 | 天空図の円面積に対して、建物の射影面積を除いた「空」の面積の割合(%) |
| 正射影図 | 半球を真上から平面に投影した図。天空率計算の標準 |
| 等距離射影図 | 半球の表面距離を保って平面に展開した図。視覚的把握に向く |
| 適合建物 | 斜線制限ぎりぎりに建てた仮想建物。比較対象 |
| 計画建物 | 実際に計画中の建物 |
背景: 天空率の算定では「計画建物の天空率 ≧ 適合建物の天空率」が成立すれば、その測定点における斜線制限が緩和されます。複数の測定点(道路長さや敷地形状で複数生じる)すべてで成立を確認する必要があります。Jw_cadの天空図コマンドは、この 両方の建物について同じ操作で天空図を作成し、天空率比較計算で差分を一括算出 できるように設計されています。
起動方法
| 方法 | 操作 |
|---|---|
| メニューバー | 「その他」→「天空図」 |
| ツールバー | 「その他(2)」ツールバー内の「天空」ボタン |
| ショートカット | 標準では未割当(基本設定 KEY タブで割当可) |
画像準備中 — メニューバー「その他」→「天空図」と「その他(2)」ツールバーの「天空」ボタン位置
要確認: ツールバーグループ名・ボタン文言は実機で確認します。
天空図作成の全体フロー
天空図と天空率の算出は、おおむね次の順で進めます。日影図と同じ「平面に高さを設定する」考え方を使うため、日影図コマンドの感覚をそのまま流用できます。
全体フローサマリー(全7ステップ)
| # | 操作 | 配置 |
|---|---|---|
| 1 | 平面図を準備(建物外形・敷地・測定点) | 事前作業 |
| 2 | 天空図コマンドを起動 | 「その他」→「天空図」 |
| 3 | コントロールバー「高さ(m)」に建物高さを入力 | 天空図コマンド |
| 4 | 平面図の辺をクリックして端部に高さを設定 | 天空図コマンド |
| 5 | 「確認」でアイソメ図表示し形状をチェック | 天空図コマンド |
| 6 | 「正射影(天空率)」または「三斜」で天空図と天空率を作図 | 天空図コマンド |
| 7 | 「天空率比較計算」で計画建物と適合建物の差分を算出 | 天空図コマンド |
詳細手順は以下のとおりです。
基本操作: 高さを設定して天空図データを作る
手順1: 平面図を準備する
天空率を検討したい建物の 平面図(外形線) と 測定点の位置 を、あらかじめ作図しておきます。地盤面の高さは「0」を基準とし、軒高や最高高さをm単位で把握しておきます。
画像準備中 — 検討対象の平面図と測定点の配置
Tips: 建物外形は 閉じた連続線 にしておくと、後の高さ設定でクリック対象が明確になります。建物が複雑な場合は、無理に一筆描きにせず、要所を短い辺の集合として描いてから天空図コマンドに進みましょう。
手順2: 天空図コマンドを起動
メニューバー「その他」→「天空図」、またはツールバーの「天空」をクリックします。コントロールバーが天空図モードに切り替わります。
画像準備中 — 天空図コマンド起動後のコントロールバー
手順3: 高さ(m)を入力する
コントロールバー「高さ(m)」のテキストボックスに、設定したい高さをm単位で入力します。たとえば軒高7.5mなら「7.5」と入れます。
画像準備中 — 「高さ(m)」テキストボックスに数値を入力
手順4: 平面図の辺をクリックして高さを割り当てる
平面図の辺を 左クリック すると、クリック位置に近い側の端部にいま入力中の高さが設定され、その数値が作図ウィンドウ上に書き込まれます。建物の各端部について、必要な高さを順に割り当てていきます。
| 操作 | 効果 |
|---|---|
| 線を左クリック | 近い端部に「高さ(m)」の値を設定。数値が作図される |
| 高さが設定済みの線を右クリック | その高さを取り込み、テキストボックスに反映 |
| 線を左ダブルクリック | 設定済みの高さを消去 |
Tips: 同じ高さの端部が連続する場合、最初の1点で値を入力し、以降は同じ値のまま左クリックを続ければ短時間で割り当てられます。建物の異なる部分で高さが変わる場合は、テキストボックスを書き換えてから次のクリックに進みます。
画像準備中 — 平面図の辺を左クリックして高さが端部に書き込まれる様子
手順5: アイソメ図で形状を確認する
すべての高さを設定し終えたら、コントロールバー「確認」を左クリックします。作成中のデータが アイソメ図(等角図) として表示され、作図ウィンドウ左上に 真北方向 が示されます。
| ボタン | 効果 |
|---|---|
| 「左」「右」「上」「下」 | 視点の角度を上下左右に変更 |
| 「等角」 | 左右回転角45°、上下角35.264°(標準的な等角図) |
| 「0 , 0」 | 左右回転角0°、上下角0°(真正面) |
| 「<<」 | 高さ設定モードに戻る |
背景: 真北の設定は 天空図コマンドではなく日影図コマンド側で行う 仕様です。天空率検討の前に、日影図 ※準備中 で真北を設定しておくと、アイソメ図の左上方向や太陽軌跡の方位が正しく描かれます。
画像準備中 — アイソメ図確認モードのコントロールバーと作図ウィンドウ
要確認: 「等角」ボタンを押した時の上下角は「35.264°」で固定。実機で表記の小数桁を確認します。
正射影図の作成と天空率の計算
高さデータが用意できたら、正射影図 または 等距離射影図 を選んで天空図を作図し、天空率を計算します。法令で用いるのは正射影による天空率です。
手順1: 「正射影(天空率)」を選択
コントロールバーの「正射影(天空率)」を左クリックします(視覚確認用に等距離射影が必要な場合は「等距離射影」を選択)。コントロールバーが天空図描画モードに切り替わります。
画像準備中 — 「正射影(天空率)」「等距離射影」ボタンの位置
手順2: 測定高さを入力
「測定高(m)」テキストボックスに、測定点の高さをm単位で入力します。地盤面で測る場合は「0」、建築物の道路斜線で道路反対側境界線の地盤面とする場合などはケースに応じた値を入れます。
要確認: 測定高の単位(m)の正確な表記、および建築基準法施行令135条の8に定める測定点高さの取扱いは案件ごとに法令確認が必要です。
手順3: 天空図半径を指定
「天空図半径(図寸mm)」テキストボックスに、作図する天空図の半径を 図寸mm単位 で入力します。たとえば「50」と入れると、用紙上で半径50mmの円が天空図として作図されます。
| 入力値 | 効果 |
|---|---|
| 正の数値(例: 50, 100) | 指定半径の天空図を作図し、天空率を計算 |
| 0 | 天空図は作図せず、天空率の計算のみ 行う |
Tips: 「0」を指定すると数値だけが欲しいケース(再計算・チェックのみ)に向きます。複数測定点で計算するときは、一度大きめの半径で1枚作図して見栄えを確認した後、残りは0で計算のみ流すと効率的です。
手順4: 目盛間隔を選ぶ
「目盛間隔」のプルダウンから、天空図に重ねる方位・高度目盛の間隔を選択します。空白を選ぶと目盛は描かれません。
手順5: 測定点を指示
作図ウィンドウで測定点(後退距離分セットバックした算定基準点)を 左クリック で指示します。指示が済むとコントロールバーが切り替わり、天空図の作図位置と計算オプションが選べる状態になります。
画像準備中 — 測定点指示後のコントロールバー
手順6: 計算オプションを設定
| 項目 | 効果 |
|---|---|
| 天空率計算 にチェック | 天空率の計算結果を作図する |
| 高精度計算 にチェック | 計算結果を小数点以下3桁で表示(標準は2桁) |
| 射影面積表示 にチェック | 円面積と建物の射影面積を結果と同時に表示 |
| 測定点表示 | 左から2番目に番号を入力すると、左の文字欄が編集可能になり、番号前文字を変更できる(空白だと番号は表示しない) |
Tips: 「測定点表示」は 複数測定点で天空率を一覧する 場合に便利です。「P1」「P2」のような番号付きで作図すると、図面上で測定点と計算結果が紐付き、確認申請の説明資料として読みやすくなります。
手順7: 作図位置を指示
最後に、天空図を貼り付けたい場所を作図ウィンドウで左クリックします。指示位置を中心に 正射影図と天空率の計算結果 が一括で作図されます。
画像準備中 — 正射影図と天空率の計算結果が作図された状態
背景: 正射影図の半球を真上から見た投影では、円周方向が方位、半径方向が天頂からの角度を表します。建物の影が円内で占める部分を「射影面積」、円全体から射影面積を引いた残りを「天空面積」として、天空率(%)= 天空面積 ÷ 円面積 × 100 で算出します。
太陽軌跡の重ね描き
天空図には、季節と時刻に対応する 太陽軌跡 を重ねて作図できます。日射検討や日照シミュレーションの説明資料として有効です。
手順1: 「太陽軌跡」にチェック
測定点を指示した後のコントロールバーで「太陽軌跡」にチェックを入れると、太陽軌跡用のオプション項目が表示されます。
| 項目 | 効果 |
|---|---|
| 南方向補正 | 図面の下が南になるよう天空図を回転して描画 |
| 10分間隔点表示 | 太陽軌跡の上に10分刻みの点を重ねる |
| 四季 | 冬至・春秋分・夏至の3軌跡を同時に作図(OFF時は日影図で指定された季節のみ) |
背景: 季節(緯度・冬至/夏至 等)は 日影図コマンド側で設定された値 が引き継がれます。太陽軌跡の方位を正しくするためには、日影図側で 真北・地点緯度・季節 を先に設定しておく必要があります。
手順2: 作図位置を指示
天空図の作図位置を左クリックすると、天空図と太陽軌跡が同時に描かれます。
画像準備中 — 太陽軌跡を重ねた天空図
Tips: 設計提案や住宅の日射計画資料では「夏至・冬至・春秋分」の3本を同時に出すと一目でシーズンの軌跡が比較できます。確認申請の天空率検討では太陽軌跡は必須ではないため、用途に応じて使い分けます。
三斜による面積計算から天空率を求める
Jw_cadは、正射影図の射影面積を 三斜(三角形分割)で求積 して天空率を出すモードも備えています。三斜計算式の出力を残せるため、確認申請の根拠資料として 計算過程の透明性 が高いのが利点です。
手順1: 高さデータを準備
「天空図データの作成」と同じ手順で、平面図の各端部に高さを設定します。
手順2: 「三斜」を選択
コントロールバーで「三斜」を左クリックすると、コントロールバーが三斜計算モードに切り替わります。
画像準備中 — 「三斜」モードのコントロールバー
手順3: 測定高・天空図半径・目盛間隔を入力
| 項目 | 入力 |
|---|---|
| 測定高(m) | 測定点の高さをm単位で入力 |
| 天空図半径 | 初期値 100mm(環境設定ファイルで変更可) |
| 目盛間隔 | プルダウンから選択。空白で目盛なし |
要確認: 三斜モードの天空図半径初期値「100mm」、および環境設定ファイル(jw_win.jwf 想定)での変更項目名は実機で確認します。
手順4: 測定点を指示
測定点を 左クリック で指示します。コントロールバーが切り替わり、計算方法と分割角度を選べる状態になります。
手順5: 計算方法を選ぶ
「基準建物用」または「計画建物用」を左クリックして、どちらの建物の計算かを指定します。
| 選択 | 用途 |
|---|---|
| 基準建物用(適合建物) | 斜線制限ぎりぎりに建てた仮想建物の天空率計算 |
| 計画建物用 | 実際に計画している建物の天空率計算 |
背景: 「基準建物」と「計画建物」を別々に作図しておき、それぞれ三斜モードで天空率を計算 → 後述の 天空率比較計算 で差分を出す、という流れが標準的な検討手順です。
手順6: 三斜計算と最大分割角度
「三斜計算」にチェックを入れ、「最大分割角度」プルダウンから分割角度を選びます。角度を細かくするほど精度は上がりますが計算時間も増えます。確認申請に提出する正式計算では細かめに、設計検討段階では粗めに、と使い分けます。
手順7: 作図位置を指示
天空図の作図位置を左クリックすると、正射影図 + 三斜計算による天空率結果 が作図されます。
画像準備中 — 三斜モードでの天空図と計算結果
手順8: 建物位置確認表(オプション)
「建物位置確認表」にチェックを入れた状態で作図位置を指示すると、天空図に 射影された建物の上部に建物位置番号 が振られ、別途「建物位置確認表」が作図されます。複雑な建物形状の場合に、どの面がどの番号として計算に入っているかを確認できます。
| 修飾キー | 効果 |
|---|---|
| そのまま | 表示が必要な建物位置番号のみ作図 |
| Shift + 作図位置 | すべての建物位置番号を作図 |
| Ctrl + 作図位置 | 配置図側にも建物位置番号を作図 |
Tips: 確認申請の資料として「天空図上の番号」と「配置図上の番号」を一致させたい場合は Ctrl併用 が便利です。番号で建物面を追跡できる図面になります。
画像準備中 — 建物位置確認表とCtrl併用での配置図側の番号付け
天空率比較計算(計画建物 vs 適合建物)
作図済みの2つの天空率を比較し、緩和の成否を判定するための機能です。
手順1: 天空図コマンドを起動した状態で「天空率比較計算」を選ぶ
コントロールバーの「天空率比較計算」を左クリックします。
画像準備中 — 「天空率比較計算」ボタンの位置
手順2: 比較対象の天空率を2つ選ぶ
すでに作図されている天空率(数値が書き込まれた天空図の結果)を 2つ順に左クリック で選択します。「計画建物の天空率」と「適合建物の天空率」をペアで選ぶのが基本です。
手順3: 結果書込位置を指示
比較結果を書き込む位置を作図ウィンドウで左クリックすると、2つの天空率の差分(計画 − 適合) が計算されて作図されます。
背景: 差分が 0以上 であれば、計画建物の天空率が適合建物以上ということで斜線制限の緩和が成立します。マイナス の場合は当該測定点で緩和不成立となるため、設計を見直すか別の測定点を含めて全体評価をやり直します。
画像準備中 — 天空率比較計算の結果が作図された状態
要確認: 比較計算で2つの天空率を選ぶ順序(計画→適合 か 適合→計画 か)と差分の符号は実機で確認します。
コントロールバーの主要項目
天空図コマンドのコントロールバーは、モード切替(高さ設定/確認/正射影/等距離射影/三斜/天空率比較計算)によって大きく変わります。代表的な項目をまとめます。
高さ設定モード
| 項目 | 役割 |
|---|---|
| 高さ(m) | これから設定する高さ。線クリックで端部に書き込まれる |
| 確認 | アイソメ確認モードへ切替 |
| 正射影(天空率) | 正射影モードへ切替 |
| 等距離射影 | 等距離射影モードへ切替 |
| 三斜 | 三斜モードへ切替 |
| 天空率比較計算 | 比較計算モードへ切替 |
正射影/等距離射影モード
| 項目 | 役割 |
|---|---|
| 測定高(m) | 測定点高さ(m) |
| 天空図半径(図寸mm) | 描画する天空図の半径(mm) |
| 目盛間隔 | 方位・高度目盛の刻み |
| 測定点表示 | 番号文字+番号で測定点ラベル化 |
| 天空率計算 | 結果を併記 |
| 高精度計算 | 小数3桁表示 |
| 射影面積表示 | 円面積・射影面積も表示 |
| 太陽軌跡 | 太陽軌跡の重ね描き |
| 南方向補正 | 図面下を南に回転補正 |
三斜モード
| 項目 | 役割 |
|---|---|
| 測定高(m) | 測定点高さ(m) |
| 天空図半径 | 三斜モードの初期値は100mm |
| 目盛間隔 | 方位・高度目盛の刻み |
| 基準建物用 / 計画建物用 | 計算対象の指定 |
| 三斜計算 | 三斜による求積を実行 |
| 最大分割角度 | 三角形分割の最大角度(小さいほど高精度) |
| 建物位置確認表 | 建物面に番号を振り表化 |
要確認: 各テキストボックス・チェックボックス・プルダウンの正確な表記は実機で確認します。
派生パターン
パターンA: 道路斜線の天空率緩和を検討する
道路境界線から所定距離後退した地点を測定点とし、計画建物と適合建物(道路斜線ぎりぎりの仮想建物)について、それぞれ正射影モードで天空率を作図します。最後に天空率比較計算で差分を出し、緩和の成否を測定点ごとに判定します。
パターンB: 隣地斜線・北側斜線の検討
隣地斜線・北側斜線も同じ枠組みで検討できます。測定点の取り方・後退距離・適合建物の作り方が制度ごとに異なるため、案件ごとに法令を確認しながら進めます(建築基準法施行令135条の6〜10、および条例での緩和等)。
パターンC: 三斜法と正射影法の併用
設計検討段階では正射影モードで素早く数値を見て、確認申請時には三斜モードで根拠を残す、という併用が実務的です。三斜の最大分割角度を細かくすると、申請審査側でも計算根拠が追跡しやすくなります。
パターンD: 太陽軌跡を住宅日射計画に流用する
確認申請ではなく、設計提案資料・日射計画 として太陽軌跡を活用するパターンです。リビングや庭の方位検討で、夏至・冬至・春秋分の太陽位置と建物の影を一枚にまとめると、施主への説明資料として伝わりやすくなります。
実務での使い方 ★PERSC独自
確認申請における天空率検討の現場フロー
PERSC編集部の実務感覚として、住宅・小規模建築の天空率検討は次のフローで進めるのがスタンダードです。
| # | フェーズ | 主な作業 |
|---|---|---|
| 1 | 配置検討 | 平面図に道路境界線・隣地境界線・後退距離を作図し、測定点を決める |
| 2 | 適合建物作成 | 各斜線制限ぎりぎりの仮想建物を別レイヤで作図 |
| 3 | 計画建物の高さ設定 | 天空図コマンドで建物各端部の高さを入力 |
| 4 | 天空率算出(正射影) | 各測定点について計画建物・適合建物の天空率を作図 |
| 5 | 比較計算 | 天空率比較計算で測定点ごとの差分を確認 |
| 6 | 不成立点の見直し | マイナス差分が出た測定点があれば計画修正 |
| 7 | 三斜による申請用資料 | 三斜モードで根拠付き天空図を作図 |
| 8 | 図面化 | 配置図と天空率検討図を並べ、建物位置確認表で番号を一致させる |
レイヤ運用は「計画建物」「適合建物」「測定点」「天空図結果」を必ず分ける
天空率検討で図面が荒れる最大原因は レイヤ整理の不足 です。少なくとも次の4レイヤグループに分けると、後の修正・差替が楽になります(レイヤ運用の基礎は レイヤグループ操作)。
| レイヤ | 用途 |
|---|---|
| 計画建物 | 計画建物の外形と高さ表記 |
| 適合建物 | 各斜線制限ぎりぎりの仮想建物 |
| 測定点・後退線 | 道路反対側境界線・後退距離・測定点番号 |
| 天空図結果 | 作図された天空図・計算結果・比較結果 |
PERSCの推奨: 計画建物と適合建物は 別レイヤグループ にしておくと、片方だけ表示して天空図コマンドを再実行できます。両方が常に重なって表示されると、辺の左クリックでどちらの端部に高さを設定したか分かりにくくなり、ミスの原因になります。
三斜モードと正射影モードの使い分け基準
| 用途 | 推奨モード | 理由 |
|---|---|---|
| 設計初期の感触確認 | 正射影(天空図半径0で計算のみ) | 早い・スペースを取らない |
| 計画修正中の都度チェック | 正射影(小さめの半径で作図) | 数値と図形を両方見る |
| 確認申請資料 | 三斜(最大分割角度を細かく) | 計算根拠が残る |
| 設計プレゼン資料 | 正射影 + 太陽軌跡 | ビジュアル重視 |
「天空図ファイル」を案件アーカイブに残す運用
確認申請で天空率を使った案件は、後年の確認申請変更や近隣説明で 再計算が求められる ことがあります。天空率の計算結果だけでなく、高さ設定済みの天空図ファイル(.jww) を案件アーカイブに別保存しておくと、再計算が一発で済みます。
PERSCの推奨: 「
案件名_天空率_v1.jww」のように年月日とバージョン番号を入れた専用ファイルで残します。本図面の中に天空図検討を同居させると、図面サイズが膨らみ操作も重くなります。天空率検討専用の派生ファイルとして分離保存 が実務上スマートです。
三斜面積コマンドとの違いを押さえる
Jw_cadには 三斜による面積計算機能が複数 あります。混同しやすいので役割を整理しておきます。
| 機能 | 用途 | 出力 |
|---|---|---|
| 天空図コマンドの「三斜」モード | 天空率算定の三斜求積 | 天空図 + 天空率(%) |
| 面積測定 | 平面の閉図形面積 | 数値(m²等) |
| 式計算 のヘロン公式 | 三角形3辺長から面積 | 数値 |
| 外部変形 三斜面積 | 図面上の三角形群を一括求積 | 面積表+頂点番号 |
天空率検討の三斜は 「天空図上の射影図形を三角形分割で求積する」 という固有用途です。求積図そのものとは別の作業として位置づけます。
つまずきポイント・対処 ★PERSC独自
Q: 「高さ(m)」に値を入れて線をクリックしたのに、何も書き込まれない
→ 天空図コマンドの 高さ設定モード(コントロールバーが「正射影」「三斜」等になっていない初期状態) であることを確認します。モード切替後に戻る場合は「<<」ボタンで高さ設定モードに戻ります。
Q: 高さの数値がどの辺に対応しているか分からなくなった
→ 高さが設定済みの線を右クリック すると、その高さがコントロールバーの「高さ(m)」に取り込まれます。確認用の取得操作として活用してください。誤入力なら 左ダブルクリック で消去 → 再設定です。
Q: 「確認」を押したらアイソメ図が真っ白/建物が見えない
→ 視点が不適切な角度になっている可能性があります。「等角」ボタンを押して標準視点(左右45°、上下35.264°)に戻すと建物が表示されます。「0,0」は真正面のため、平面図しか見えないのは仕様です。
Q: 真北の方向がアイソメ図でおかしい
→ 真北は 天空図コマンドではなく日影図コマンド で設定する仕様です。先に 日影図 ※準備中 で真北方向を設定してから天空図に戻ってください。
Q: 天空図半径を「0」にしたら何も描かれない
→ それが正しい挙動です。「0」は 計算のみ モードで、結果数値は作図位置に書き込まれます。図形を伴った天空図が必要な場合は、半径を50〜100mm程度に設定し直します。
Q: 三斜モードの天空図半径だけ100mm固定っぽい
→ 三斜モードの天空図半径は 初期値100mm で、環境設定ファイル(jw_win.jwf)の関連項目を編集すれば変更できます。ただし日常的な変更は不要なケースが多く、まずは100mmのまま使うのを推奨します。
Q: 太陽軌跡を入れたら方位がおかしい
→ 「南方向補正」のチェック有無で、図面の下が南に補正されるか・図面の真北方向のままかが切り替わります。配置図の真北とアイソメ確認の真北が一致しているかも合わせて確認してください。
Q: 天空率比較計算で2つを選んだが、結果がマイナスになる
→ 計画建物の天空率 < 適合建物の天空率の状態です。当該測定点で斜線制限の緩和が不成立 ということなので、計画建物の高さ・後退距離・形状を見直すか、別ルート(斜線制限への直接適合・条例緩和)を検討します。マイナス値が出た測定点は配置図上で印を付け、修正後の再計算で消し込んでいくのがよい運用です。
Q: 道路斜線の制度がよく分からない
→ 制度面の解説はこの記事の範囲外です。建築基準法56条1項・施行令135条の8〜10、JIS A 0150(建築製図通則)に関する解説記事 JIS A 0150(建築製図通則)の全体像 ※準備中 や、建築基準法解説書を参照してください。
Q: 計算結果の小数桁が足りない/多い
→ 「高精度計算」のチェックで2桁・3桁の切替ができます。確認申請では3桁が無難です。
Q: 配置図に建物位置番号を振りたい
→ 「建物位置確認表」にチェックした上で Ctrlキーを押しながら 作図位置を指示すると、配置図側にも番号が打たれます。Shiftだとすべての位置番号、Ctrlだと配置図側にも、と修飾キーで挙動が変わります。
Q: バッチ処理で天空率を一括計算したい
→ 標準コマンドではバッチ的な一括計算はできません。配置図上で測定点を多数置き、半径0の正射影モードで連続的に計算結果だけを書き出す運用が現実解です。バッチ計算が必要な大規模案件では、外部変形ベースの天空率計算プログラム(有志公開)を導入する選択肢もあります。導入手順は 外部変形プログラムの導入 を参照。
関連項目
- 外部変形の基本 — 天空率計算系の外部変形を導入する前提知識
- 外部変形プログラムの導入 — 有志公開の天空率計算外部変形の入手と配置
- 日影図 ※準備中 — 真北・季節・緯度の設定(天空図と共通の設定)
- 面積測定 — 平面の閉図形面積(天空図とは別系統)
- 式計算 — ヘロン公式・三斜面積計算(数値のみ)
- レイヤグループ操作 — 計画建物と適合建物のレイヤ分離運用
- JIS A 0150(建築製図通則)の全体像 ※準備中 — 道路斜線・隣地斜線の制度解説
まとめ
- 「天空図」コマンドは 平面図に高さを設定 → 半球を平面に投影 → 天空率を算出 する一連の機能
- モードは 高さ設定/確認(アイソメ)/正射影/等距離射影/三斜/天空率比較計算 の6種
- 法令で用いるのは 正射影による天空率。三斜モードは計算根拠を残せるため確認申請に有利
- 計画建物 ≧ 適合建物 が成立するかを天空率比較計算で測定点ごとに判定する
- レイヤは「計画建物」「適合建物」「測定点」「天空図結果」を分けるのが実務の鉄則
- 真北・季節は 日影図コマンド側で設定 されるため、天空図単独では完結しない